米ロ首脳会談 侵略者への厚遇に驚く
(朝日新聞社説 2025年8月17日)
米露首脳会談 目先の取引では停戦できぬ
(読売新聞社説 2025年8月17日)
ウクライナ侵攻 米露首脳会談 大国のごり押し許されぬ
(毎日新聞社説 2025年8月17日)
米露首脳会談 プーチン氏を喜ばせるな
(産経新聞社説 2025年8月17日)
米ロはウクライナの領土を取引するな
(日本経済新聞社説 2025年8月16日)
What Was the Trump-Putin Meeting Even About?
(New York Times, USA, 2025年8月15日)
There must be no more gifts to Vladimir Putin
(The Gardian, GBR, 2025年8月17日)
Après le sommet Trump-Poutine, aux Européens de jouer leur carte
(Le Monde, FRA, 2025年8月16日)
Europa wird sein Zaudern und seine Machtlosigkeit lange bereuen
(Die Welt, GEU, 2025年8月16日)
アラスカでプーチン大統領とトランプ大統領が会談を行った。両者の会談はロシアのウクライナ侵攻以来、初めてのことだ。その会談に関する各紙社説。今回はちょと世界各国の意見も見てみたかったので、海外の新聞社説も参考にしてみた。
まさに袋叩きと言ってよい。確かに各紙が指摘している通り、国際法に則して正義を語るなら、今回の紛争の非はロシア側にある。他国を侵略し領土を割譲させようとするなど言語道断。それを利するトランプは何を考えているんだ、という論調が多い。
わりと感情論的な罵倒がはびこる中、毎日新聞が若干冷静に今回のアメリカの非を論じている。トランプは今回「仲介者」としてプーチンと会談したのではなく、まるで自分に全権があるかのごとく停戦のあり方を提示している。
NYTはこの会談を「プーチン大統領が戦争を継続するための時間稼ぎに成功した」という評価をしており、全体的にロシアを利する結果となった、と見ている。トランプ大統領が戦争終結について努力を継続することにも懐疑的で、それはウクライナにとても打撃になる。批判だらけの記事といってよい。
一方、地理的に当事者意識が強いヨーロッパの新聞各紙はどう報じているか。
Le Mondeは「ウクライナ問題を収束させるカードは欧州各国が握っており、それを行使することが必要だ」と言っているが、これはロジックとしてはアメリカの理屈と変わらない。Le Monde紙の書き方のちょっと気になる点は、アメリカと同じような「帝国主義的大国優越感」が行間から滲み出ていることだ。ウクライナと連携しサポートする分には構わないが、「これは我らの戦争」とばかりウクライナの頭越しにロシアに圧力をかけるようなことがあっては、平和的に停戦合意に達したとしても後々禍根を残す。
社説でこんなこと書いていいのかな、という論調。フランスとはちょっと違った立場なのが面白い。ドイツは欧州の紛争に関して積極的に軍事派兵ができないという事情がある。現実的なウクライナ支援の方法が限られているので、その分言論が過激になるのだろうか。
まぁ確かに今回のトランプの出臍っぷりを見れば、狙っているのはノーベル平和賞かな、という気がしなくもない。トランプに限らず、アメリカの大統領が欧州・中近東の和平交渉に乗り出してくるときはほとんどがノーベル平和賞狙いといってよい。そして、それに成功したアメリカ大統領はいまのところいない。イギリス流の茶化し方でトランプを揶揄している。
実際のところ、なぜトランプ大統領は今になっていきなりプーチンに接近したのか。
トランプがいかに馬鹿であろうと気狂いであろうと、ウクライナ侵攻に関してプーチンを利するような行動をとれば世界中から非難を浴びることになることは分かっていたはずだ。なのにトランプは今回敢えてこんな無意味な会談をセッティングした。その意図はどこにあったのか。 僕が世界中の新聞社説を読んだ限り、そのことに触れている新聞はひとつもなかった。それが逆に異様に見える。
今回のアラスカ会談の過程を見ると、なんとなくトランプ大統領は焦っているように見える。いままでのトランプ政権の動向を考えると、トランプが焦ってプーチン融和に動き出したのはどう考えてもウクライナ戦線の和平実現のためとは思えない。トランプは一体何をそんなに焦っているのか。
トランプ第2政権が一貫して固執してきたのは、国内産業の保護だ。具体的には取引相手国すべてに関税の爆上げをちらつかせ、国内雇用と流通の促進を図ってきた。そもそもビジネスマンだったトランプ大統領は、すべての政策において「損得勘定」で妥当性を図っていると断じてよい。
そんなトランプ政権が最も「ビジネスの敵」と見做しているのはどこの国か。日本国内の新聞はあたかもトランプが日本をターゲットに関税引き上げを図っているかのように煽っているが、トランプ政権にとって日本などはものの数ではあるまい。安全保障的に重要な同盟国であり、現在の日本国首相・石破茂は完全に舐めてかかれる程度の無能でしかない。
どう考えても、いまアメリカが最も重要な仮想敵国としているのは、中国だろう。経済圏において中国を抑え込む必要があるだけではなく、台湾有事や香港問題を皮切りに尖閣諸島にもちょっかいを出している中国は、安全保障上の軍事対立国でもある。この中国をどうやって切り崩すか。それがトランプ政権の最も重要な懸案事項であるはずだ。
今回、トランプがプーチンに融和的な策をとったのは、中国を孤立させるためではないか。
中国とロシアは単純な同盟国ではないが、「反アメリカ」という軸で強調はしている。2024年5月にはプーチン大統領が訪中し、北京で習近平国家主席と会談した。その際「新時代の包括的戦略協力パートナーシップの深化に関する共同声明」を発表している。これにはロシア側の強い要望で「ウクライナ危機の政治的・外交的解決において建設的役割を果たそうとする中国の用意を歓迎する」という旨の内容が盛り込まれた。これは要するに世界中から制裁を喰らったロシアが、さみしくなって中国に泣きついたということだ。
中国はロシアのウクライナ侵攻を支持してはいないが、地政的にロシアを牽制する必要はある。いま中国の軍事的懸案は台湾・香港・尖閣諸島などすべて太平洋側にある。そちらに軍事的負荷を集中させるためには、背後となるロシアとの関係を安定させる必要がある。
またロシアは北朝鮮との関係も強化している。北朝鮮は、世界中から経済制裁を受けているロシアがウクライナ戦線で必要な軍需物資を輸入できる貴重な相手国だ。2023年には金正恩・朝鮮労働党総書記がロシア極東を訪問し、2024年にはプーチン大統領が北朝鮮を訪問している。その際にロシアと北朝鮮は「包括的戦略パートナーシップ条約」に調印している。これは「いずれかの国が戦争状態になった場合、軍事支援を提供する」という内容で、事実上の同盟国化だ。
北朝鮮・中国・ロシアという「反米同盟国」の中で、いちばん切り崩しやすいのがロシア、という判断なのではないか。トランプ大統領にとって習近平や金正恩と握手をするのはハードルは高いが、プーチンであれば簡単に呼び出せる、という計算なのではないか。そこには単純な国力計算や国内事情だけではなく、民族差別的な背景もあるだろう。他民族の排斥を堂々と掲げているトランプにとって、分断策の切り崩しとして西洋人のプーチンを選ぶのは不思議ではない。
だから今回のアラスカ会談の目的は「ウクライナ問題の解決」などではない。そんなものはただの口実に過ぎず、トランプの目的はただひとつ「プーチンと握手している画を、中国と北朝鮮に見せること」なのだと思う。経済においても国内基盤においても死に体のロシアなど、ものの数ではない。ましてやトランプにとってはウクライナ戦線がどう膠着しようと知ったこっちゃないだろう。そんなことよりも、経済・政治・軍事すべてにおいて難敵の中国を孤立させることが、いまトランプが最も腐心しているところではないか。
予測としては、そのうちトランプは踵を返してプーチンを見限り、中国に接近すると思う。いまトランプがプーチン寄りにしているのは、「反米同盟国」に亀裂を入れるために過ぎない。頃合いを見計らって中国のほうに寄り、ロシアの焦りを誘う策に出るだろう。ロシアに接近するためにはウクライナ戦線という「口実」があるが、アメリカにとって中国に寄る口実はいまのところ無い。だからアメリカが中国に接近するために利用するのは台湾・韓国・日本のどれかだろう。いまアメリカが関税問題でそれらの国に圧力をかけているのは、いざという時に利用すべく関税を引き下げ、「ありもしない恩を売る」ための伏線ではないか。
世界中の新聞が今回のアラスカ会談を「ウクライナ戦線の安定」という観点から批判している。しかしもともとウクライナ支援に対して批判的なトランプ大統領が、そんな批判を気にするとは思えない。トランプにとってはウクライナが滅ぼされようがロシアの植民地になろうが、一切知ったこっちゃないだろう。アメリカは常に自国の利益しか考えず、そのための方策ならば手段を選ばない。そこから逆算すれば、何を狙ってあんな馬鹿な会談を実現させたのか、見えてくるような気がする。
(朝日新聞社説 2025年8月17日)
米露首脳会談 目先の取引では停戦できぬ
(読売新聞社説 2025年8月17日)
ウクライナ侵攻 米露首脳会談 大国のごり押し許されぬ
(毎日新聞社説 2025年8月17日)
米露首脳会談 プーチン氏を喜ばせるな
(産経新聞社説 2025年8月17日)
米ロはウクライナの領土を取引するな
(日本経済新聞社説 2025年8月16日)
What Was the Trump-Putin Meeting Even About?
(New York Times, USA, 2025年8月15日)
There must be no more gifts to Vladimir Putin
(The Gardian, GBR, 2025年8月17日)
Après le sommet Trump-Poutine, aux Européens de jouer leur carte
(Le Monde, FRA, 2025年8月16日)
Europa wird sein Zaudern und seine Machtlosigkeit lange bereuen
(Die Welt, GEU, 2025年8月16日)
アラスカでプーチン大統領とトランプ大統領が会談を行った。両者の会談はロシアのウクライナ侵攻以来、初めてのことだ。その会談に関する各紙社説。今回はちょと世界各国の意見も見てみたかったので、海外の新聞社説も参考にしてみた。
まぁ、大不評といっていい。どの新聞も「会談はプーチンを利するだけだ」「トランプは何を考えているんだ」という非難ばかり。この会談は事実上、アメリカ側からの融和政策であり、ウクライナ戦線で時間稼ぎをしたいプーチンにとって渡りに船だった、という評価が多い。
この戦争はウクライナのみならず、国際社会にとっても大戦後に目指した「法の支配」による秩序を根底から覆しかねない重大な事態だ。しかし、両首脳はその喫緊の課題への対処は明瞭にしないまま、良好な関係の演出に終始した。
(朝日社説)
プーチン氏はトランプ氏との個人的な関係を深めることで追加的な経済制裁を回避し、その間にウクライナでの占領地を拡大しようとしているのだろう。プーチン氏を厚遇して事態を打開しようとしたトランプ氏の目算は外れたと言わざるを得ない。トランプ氏は空港でプーチン氏を拍手で出迎え、赤絨毯の上を並んで歩き、自分の専用車に乗せた。プーチン氏は国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪の疑いで逮捕状を出されており、身柄拘束を警戒して出国を控えている。米国はICCに非加盟だが、プーチン氏を招待し、国際的な存在感を示すのに手を貸したに等しい
(読売社説)
会談が結果的にプーチン氏を利する形になったのは否めない。国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪の疑いで逮捕状を発行されながら米国に招かれたことで、国際社会に存在感をアピールする機会となった。停戦に応じるそぶりを見せ、制圧地域を更に拡大するための時間を稼いだ。トランプ氏が発動すると警告していた追加制裁も先送りされている。そもそも国連憲章に違反して武力を行使したのはロシアである。停戦の実現に当たっては、「法の支配」に基づくウクライナの領土と主権の回復が最優先されなければならない。
(毎日社説)
懸念されるのは、トランプ氏のプーチン氏への宥和的姿勢が目立ったことだ。露軍はウクライナへの無差別攻撃を続けている。だが、トランプ氏は会見でロシアの侵略を批判しなかった。それどころか、両氏は具体的な一致点に全く言及しなかったにもかかわらず、会談を「有益だった」「生産的だった」と振り返った。互いに親密な関係をアピールし合った。強い違和感を覚える。北極圏の共同開発やビジネス協力について議論したのも言語道断だ。
(産経社説)
まさに袋叩きと言ってよい。確かに各紙が指摘している通り、国際法に則して正義を語るなら、今回の紛争の非はロシア側にある。他国を侵略し領土を割譲させようとするなど言語道断。それを利するトランプは何を考えているんだ、という論調が多い。
わりと感情論的な罵倒がはびこる中、毎日新聞が若干冷静に今回のアメリカの非を論じている。トランプは今回「仲介者」としてプーチンと会談したのではなく、まるで自分に全権があるかのごとく停戦のあり方を提示している。
懸念されるのは米露が一方的に停戦の枠組みを決め、ウクライナに押しつける構図となることだ。トランプ氏は当初、「領土交換」による停戦に言及していた。詳細は不明だが、ウクライナに対して領土割譲につながる譲歩を迫る内容とみられる。危機感を覚えた欧州諸国が翻意を促し、トランプ氏はウクライナ抜きでは交渉しないと約束した。ただ米テレビのインタビューで、領土問題を話し合ったと明かしており、領土割譲を含む停戦条件が議題になった可能性がある。
(毎日社説)
当たり前のことだが、トランプ大統領個人はウクライナの自治権について何の権限も持っていない。ところが今回、トランプ大統領は自ら乗り出してウクライナの停戦について言動を繰り出した。これは帝国主義の時代の大国意識「超大国が衛星国の生殺与奪の権をもつ」という傲慢な姿勢だ。今回のトランプの振る舞いで恒常的に批判されるべきところはここだろう。提案の内容自体の妥当性以前に、トランプはそもそもそんな提案をできる立場ではない、というところを批判しなければならない。
各紙の中で唯一、日経だけが今回の会談を肯定的に捉えている。日経は現在のウクライナ戦線が膠着状態にある状況を踏まえて、「しないよりはした方がマシ」という言い方で今回の会談を総括している。
米国のトランプ、ロシアのプーチン両大統領が15日に米アラスカ州で会談したが、ロシアの侵略が続くウクライナの停戦へ打開策を見いだせなかった。米ロはウクライナの領土が「取引」の対象ではないと深く認識し、公正な和平の実現を急ぐべきだ。
トランプ、プーチン両氏が会うのは2019年以来だ。22年にウクライナ侵略が始まって以降、初の米ロ首脳会談で和平問題を話し合った意義は小さくない。ウクライナとロシアの国民の大半も和平交渉を望んでいる。
(日経社説)
もちろん日経も今回の会談の「結果」については懐疑的で、実際にはロシアが占領地を手放すことはあるまい、という予測をしている。また今回の会談が結果としてウクライナの頭越しに米露が領土割譲について話し合ったことについて批判をしている。しかし今回の会談をもとに、ウクライナや欧州各国のトップを加えて首脳会談を開く可能性に言及し、最終的にはロシアへの圧力を強めることを主張している。主張の仕方は他の4紙とは異なるが、ロシアを批判し戦線を凍結する必要性を主張していることに変わりはない。
当のアメリカ国内ではどういう報道をされているのか、と見てみると、New York Timesでは日本の新聞以上に今回の会談に憤慨している様子が読み取れる。今回の会談を完全に「プーチンの勝ち」としており、嬉々として会談に臨んだ様子を描写している。
What was clear, though, was that Vladimir Putin was well satisfied. Reading from prepared notes — raising the question of whether they had been prepared before the meeting — at a press briefing after the three-hour meeting, the Russian president appeared especially satisfied with the fact that he, a pariah and wanted war criminal in Europe, was having what looked like a chummy face-to-face with the president of the United States, and on American soil, adjacent to Russia.
He heaped compliments on President Trump, even suggesting that Mr. Trump was right to say that had he been president at the time, there would have been no Ukraine war. He spoke at some length of Alaska’s Russian and Orthodox heritage, of the importance of turning the page in U.S.-Russian relations, of the great potential of trade between their countries (which drew a grin from Mr. Trump). But on the war in Ukraine, he went back to his old script, that to make a settlement lasting all the “root” causes of the conflict, which in his view are all on Ukraine’s side, have to be eliminated.
(New York Times; opinion)
しかし、ウラジーミル・プーチン大統領が大満足していたことは明らかだった。3時間に及ぶ会談後の記者会見で、用意されたメモを読み上げるプーチン大統領は、会談前に準備されたのかという疑問も生じさせるが、ヨーロッパでは社会ののけ者で指名手配中の戦争犯罪者である自分が、ロシアに隣接するアメリカの地で、まるで親しい間柄のようにも見える会談をしていることに対し、特に満足している様子だった。
彼はトランプ大統領を惜しみなく称賛し、トランプ氏が当時大統領だったらウクライナ戦争はなかっただろうと発言したのは正しかったとさえ示唆した。彼はアラスカのロシア正教の伝統、米ロ関係の新たなページを開くことの重要性、そして両国間の貿易の大きな可能性(トランプ氏からニヤリと笑顔を引き出した)について長々と語った。しかし、ウクライナ戦争に関しては、彼は古い主張に立ち戻り、永続的な解決には、彼の見解ではすべてウクライナ側にある紛争の「根本」原因のすべてを排除しなければならないとした。
(ニューヨークタイムズ社説)
NYTはこの会談を「プーチン大統領が戦争を継続するための時間稼ぎに成功した」という評価をしており、全体的にロシアを利する結果となった、と見ている。トランプ大統領が戦争終結について努力を継続することにも懐疑的で、それはウクライナにとても打撃になる。批判だらけの記事といってよい。
一方、地理的に当事者意識が強いヨーロッパの新聞各紙はどう報じているか。
フランスの新聞Le Mondeは、今回の米露会談が実質的に何の効果ももたらしていないことを指摘し、今後この問題を解決するのは欧州主導になるだろう、という予測をしている。その上でプーチンが欧州諸国のほうを牽制する可能性に触れ、その手に乗ってはならない、という論調を展開している。
Face à ce non-résultat, la balle est maintenant dans le camp des Européens, auxquels M. Trump a rendu compte samedi matin, ainsi qu’au président ukrainien, Volodymyr Zelensky, de ses entretiens et des points d’accord qu’il a mentionnés. Avant même de leur parler, il a adressé ce conseil à M. Zelensky sur Fox News, après le sommet : « Faites un deal ! » De la manière dont MM. Poutine et Trump ont présenté les choses à Anchorage, on peut déduire que ce « deal » proposé n’est pas à l’avantage de Kiev. A l’unisson avec M. Trump, M. Poutine a dit espérer que les Européens « n’essaieront pas de saper les progrès escomptés par des provocations ou des intrigues en coulisses ».
Soucieux de ne perdre aucune chance de mettre fin à la guerre, le président ukrainien a cependant réagi positivement à l’idée d’une rencontre à trois avec MM. Poutine et Trump et décidé de se rendre lundi à Washington pour en parler. Le scénario redouté par les Européens, celui d’un arrangement concocté dans leur dos par les leaders russe et américain, n’est pas écarté. Mais, contrairement à M. Trump, M. Poutine reconnaît qu’ils ont, avec Kiev, des cartes à jouer. Le moment est venu de s’en servir, avec fermeté.
(Le Monde; Éditoriaux)
この不確定な結果に直面し、今やボールは欧州諸国に委ねられている。トランプ大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と共に、土曜日の朝、会談と合意点について欧州諸国に報告した。首脳会談後、トランプ大統領は彼らと話す前にも、FOXニュースでゼレンスキー大統領に「合意を成立させろ!」と助言した。プーチン大統領とトランプ大統領がアンカレッジで状況を説明した様子から、この「合意」案はキエフにとって不利なものであることが窺える。プーチン大統領はトランプ大統領と同様に、欧州諸国が「挑発行為や水面下の陰謀によって期待される進展を損なおうとしない」ことを期待すると述べた。
それでも、戦争終結の機会を逃したくないウクライナ大統領は、プーチン大統領とトランプ大統領との三者会談の案に前向きな反応を示し、月曜日にワシントンを訪れてこの問題について協議することを決めた。欧州諸国が懸念するシナリオ、すなわち、ロシアとアメリカの指導者が背後で画策する取り決めの可能性は、依然として排除されていない。しかし、トランプ氏とは異なり、プーチン氏は、ウクライナ政府と共に、欧州諸国が使えるカードを持っていることを認識している。今こそ、そのカードを、断固として使うべき時だ。
(ル・モンド社説)
Le Mondeは「ウクライナ問題を収束させるカードは欧州各国が握っており、それを行使することが必要だ」と言っているが、これはロジックとしてはアメリカの理屈と変わらない。Le Monde紙の書き方のちょっと気になる点は、アメリカと同じような「帝国主義的大国優越感」が行間から滲み出ていることだ。ウクライナと連携しサポートする分には構わないが、「これは我らの戦争」とばかりウクライナの頭越しにロシアに圧力をかけるようなことがあっては、平和的に停戦合意に達したとしても後々禍根を残す。
ドイツ紙のDie Weltはさらに語調が激しい。今回の会談をトランプ大統領の無能さひとつに帰着させ、トランプ個人の批判を展開している。
Doch diese Ausführungen wären bei einem Charakter wie Trump wohl zu viel verlangt. Ganz davon in Anspruch genommen, jemand zu sein, den er bewundern kann, liebt der US-Präsident den Trompetenstoß, wild und ohne durchdachte Komposition. Genau derart flog er nach Alaska. Mal dachte er die Tage davor laut über ukrainische Seegrundstücke nach, die sich Russland verständlicherweise angeeignet habe. Mal gab er den starken Führer, der den Kreml schwer bestrafen werde, wenn nicht umgehend ein Waffenstillstand vereinbart werden würde.
Worte wiegen für Trump nichts: Kaum ausgesprochen, fliegen sie davon wie Seifenblasen und zerplatzen in der Luft. So kam es, wie es kommen musste: Der Berg kreißte und gebar eine Maus.
(Die Welt; Meinung)
しかし、これらの発言は、トランプのような人物にはおそらくあまりにも過大な要求だろう。尊敬される存在であることにすっかり夢中になっている米国大統領は、荒々しく、思慮に欠けたトランペットの音を愛する。まさにそのようにして彼はアラスカへ飛んだ。ある時は、ロシアが当然のように奪取したウクライナの領土について、出発前の数日間、声に出して考えていた。またある時は、停戦が即時合意に至らなければクレムリンを厳しく罰する強硬な指導者を演じた。
トランプにとって言葉は何の意味も持たない。ほとんど口にされない言葉は、シャボン玉のように空に散り、はじける。そして、必然的にそうなった。山が苦しんで産み出したのは、結局のところネズミ一匹だった。
(ディ・ウェルト社説)
社説でこんなこと書いていいのかな、という論調。フランスとはちょっと違った立場なのが面白い。ドイツは欧州の紛争に関して積極的に軍事派兵ができないという事情がある。現実的なウクライナ支援の方法が限られているので、その分言論が過激になるのだろうか。
イギリス紙は相変わらずちょっと離れたところから皮肉っぽい目で今回の件を眺めている。Gardian紙は社説で今回のトランプ大統領の暴走の原因を「個人的な承認欲求」と見ている。
The peremptory tone is worryingly reminiscent of February’s notorious Oval Office meeting, when Mr Zelenskyy was told: “You don’t have the cards.” In vague terms, Mr Trump has alluded to a future US role in security guarantees following a deal. But as Ukraine fights for a viable future, he appears impatient to move on to doing lucrative future business with Moscow, and angling for a Nobel peace prize.
(The Gardian; Opinion)
この高圧的な口調は、ゼレンスキー大統領が「君にはカードがない」と言われた2月の悪名高い大統領執務室での会談を思い起こさせるほどだ。トランプ氏は漠然と、合意後の安全保障における米国の役割を示唆してきた。しかし、ウクライナが現実的な未来を求めて奮闘する中、トランプ氏はモスクワとの将来的な利益となるビジネスに着手し、ノーベル平和賞を狙うことに焦りを感じているようだ。
(ガーディアン社説)
まぁ確かに今回のトランプの出臍っぷりを見れば、狙っているのはノーベル平和賞かな、という気がしなくもない。トランプに限らず、アメリカの大統領が欧州・中近東の和平交渉に乗り出してくるときはほとんどがノーベル平和賞狙いといってよい。そして、それに成功したアメリカ大統領はいまのところいない。イギリス流の茶化し方でトランプを揶揄している。
実際のところ、なぜトランプ大統領は今になっていきなりプーチンに接近したのか。
トランプがいかに馬鹿であろうと気狂いであろうと、ウクライナ侵攻に関してプーチンを利するような行動をとれば世界中から非難を浴びることになることは分かっていたはずだ。なのにトランプは今回敢えてこんな無意味な会談をセッティングした。その意図はどこにあったのか。 僕が世界中の新聞社説を読んだ限り、そのことに触れている新聞はひとつもなかった。それが逆に異様に見える。
今回のアラスカ会談の過程を見ると、なんとなくトランプ大統領は焦っているように見える。いままでのトランプ政権の動向を考えると、トランプが焦ってプーチン融和に動き出したのはどう考えてもウクライナ戦線の和平実現のためとは思えない。トランプは一体何をそんなに焦っているのか。
トランプ第2政権が一貫して固執してきたのは、国内産業の保護だ。具体的には取引相手国すべてに関税の爆上げをちらつかせ、国内雇用と流通の促進を図ってきた。そもそもビジネスマンだったトランプ大統領は、すべての政策において「損得勘定」で妥当性を図っていると断じてよい。
そんなトランプ政権が最も「ビジネスの敵」と見做しているのはどこの国か。日本国内の新聞はあたかもトランプが日本をターゲットに関税引き上げを図っているかのように煽っているが、トランプ政権にとって日本などはものの数ではあるまい。安全保障的に重要な同盟国であり、現在の日本国首相・石破茂は完全に舐めてかかれる程度の無能でしかない。
どう考えても、いまアメリカが最も重要な仮想敵国としているのは、中国だろう。経済圏において中国を抑え込む必要があるだけではなく、台湾有事や香港問題を皮切りに尖閣諸島にもちょっかいを出している中国は、安全保障上の軍事対立国でもある。この中国をどうやって切り崩すか。それがトランプ政権の最も重要な懸案事項であるはずだ。
今回、トランプがプーチンに融和的な策をとったのは、中国を孤立させるためではないか。
中国とロシアは単純な同盟国ではないが、「反アメリカ」という軸で強調はしている。2024年5月にはプーチン大統領が訪中し、北京で習近平国家主席と会談した。その際「新時代の包括的戦略協力パートナーシップの深化に関する共同声明」を発表している。これにはロシア側の強い要望で「ウクライナ危機の政治的・外交的解決において建設的役割を果たそうとする中国の用意を歓迎する」という旨の内容が盛り込まれた。これは要するに世界中から制裁を喰らったロシアが、さみしくなって中国に泣きついたということだ。
中国はロシアのウクライナ侵攻を支持してはいないが、地政的にロシアを牽制する必要はある。いま中国の軍事的懸案は台湾・香港・尖閣諸島などすべて太平洋側にある。そちらに軍事的負荷を集中させるためには、背後となるロシアとの関係を安定させる必要がある。
またロシアは北朝鮮との関係も強化している。北朝鮮は、世界中から経済制裁を受けているロシアがウクライナ戦線で必要な軍需物資を輸入できる貴重な相手国だ。2023年には金正恩・朝鮮労働党総書記がロシア極東を訪問し、2024年にはプーチン大統領が北朝鮮を訪問している。その際にロシアと北朝鮮は「包括的戦略パートナーシップ条約」に調印している。これは「いずれかの国が戦争状態になった場合、軍事支援を提供する」という内容で、事実上の同盟国化だ。
北朝鮮・中国・ロシアという「反米同盟国」の中で、いちばん切り崩しやすいのがロシア、という判断なのではないか。トランプ大統領にとって習近平や金正恩と握手をするのはハードルは高いが、プーチンであれば簡単に呼び出せる、という計算なのではないか。そこには単純な国力計算や国内事情だけではなく、民族差別的な背景もあるだろう。他民族の排斥を堂々と掲げているトランプにとって、分断策の切り崩しとして西洋人のプーチンを選ぶのは不思議ではない。
だから今回のアラスカ会談の目的は「ウクライナ問題の解決」などではない。そんなものはただの口実に過ぎず、トランプの目的はただひとつ「プーチンと握手している画を、中国と北朝鮮に見せること」なのだと思う。経済においても国内基盤においても死に体のロシアなど、ものの数ではない。ましてやトランプにとってはウクライナ戦線がどう膠着しようと知ったこっちゃないだろう。そんなことよりも、経済・政治・軍事すべてにおいて難敵の中国を孤立させることが、いまトランプが最も腐心しているところではないか。
予測としては、そのうちトランプは踵を返してプーチンを見限り、中国に接近すると思う。いまトランプがプーチン寄りにしているのは、「反米同盟国」に亀裂を入れるために過ぎない。頃合いを見計らって中国のほうに寄り、ロシアの焦りを誘う策に出るだろう。ロシアに接近するためにはウクライナ戦線という「口実」があるが、アメリカにとって中国に寄る口実はいまのところ無い。だからアメリカが中国に接近するために利用するのは台湾・韓国・日本のどれかだろう。いまアメリカが関税問題でそれらの国に圧力をかけているのは、いざという時に利用すべく関税を引き下げ、「ありもしない恩を売る」ための伏線ではないか。
世界中の新聞が今回のアラスカ会談を「ウクライナ戦線の安定」という観点から批判している。しかしもともとウクライナ支援に対して批判的なトランプ大統領が、そんな批判を気にするとは思えない。トランプにとってはウクライナが滅ぼされようがロシアの植民地になろうが、一切知ったこっちゃないだろう。アメリカは常に自国の利益しか考えず、そのための方策ならば手段を選ばない。そこから逆算すれば、何を狙ってあんな馬鹿な会談を実現させたのか、見えてくるような気がする。
いまのアラスカ、涼しいのかな。


