サモア戦



ラグビーW杯 プールB
日本 26ー5 サモア


日本代表の試合だから注目なのではなく、当初「無風区」と思われていたプールBを一挙に大混戦に陥れた試合。日本代表が、格上のサモア代表に快勝した。完勝と言ってよい。 

日本は初戦で南アフリカに奇跡の逆転勝利をしたあと、中3日でスコットランドと対戦。45-10で大敗した。この原因を、過密日程による疲労度と捉える報道が多かったが、問題は肉体的疲労よりも精神的な切り替えにあったと思う。スコットランド戦のとき、まだ日本代表は「南アフリカに勝った」という余韻に浸っており、次の試合に対する姿勢ができあがっていなかったのではないか。ミスを連発し、集中力が欠けているように見えた。

それから10日置いてのサモア戦。一週間以上の間隔は、日本代表が集中力を結び直すには十分だったと見える。南アフリカ戦のときのように、高い集中力でサモアの攻撃を防ぎきった。丁寧かつ確実なディフェンスで、身体能力に勝るサモアの攻撃を食い止め、我慢比べに持ち込む。サモアは攻めても攻めても敗れない日本の防御ラインに苛立ち、反則を繰り返した。前半16分、19分と立て続けにシンビンを出し、13人で戦う羽目になる。しかも退場を受けたのはPRとNo.8で、スクラムと密集戦でかなりのハンデを負うことになった。

日本代表はその隙を見逃さなかった。前半24分に日本はペナルティートライを取る。「もしこの反則がなければ確実にトライをとれていたはず」という認定トライだ。退場者のみならずペナルティートライをとられる時点で、サモアはかなり混乱していたことが分かる。

それ以降のサモアは、日本の忍耐戦術に嵌り、ずるずるとペースを失っていく。特にタックルはひどかった。サモアのタックルは、全体的に高く、両腕でバインドをせず体をぶち当てるだけの反則タックルが多かった。首を狙うハイタックルの反則を何度も取られ、審判にも注意された。

ハイタックルというのは、十分に引いて待ち構える時ではなく、下がりながらディフェンスをせざるを得ないときによく起こる。疲労度が増してくると、守備側は姿勢を低く構えて守るのが難しくなる。つまりサモアは、日本のFWにかなり縦を突かれ、戻りながらディフェンスをさせられていたということだ。集散が遅く、攻守の切り替えも遅い。日本はSHの田中がうまくサモア守備陣の穴を見つけ、FWを突っ込ませる効率のよい攻撃をしていた。特にLOトンプソンの縦突進は見応えがあった。体格で勝るサモアのFW陣が2, 3人かかって止めても、構わず前に進んでいた。

一方、日本のディフェンスは、南アフリカと戦ったときの集中力を取り戻し、激しいタックルと丁寧なフィジカルで、肉弾戦を得意とするサモアの攻撃を凌いだ。日本の失点はミスからとられたトライの5点だけで、自陣での反則からのPGをまったく取られていない。つまり日本は、自陣深くに押し込まれた時でも、反則をしない丁寧なプレイができていたということだ。高い集中力で攻守を切り替え、捨てるべきラックはすばやく捨てて、人数を余らせることなくラインディフェンスに備えた。

結局、今回のサモア戦の勝因は、南アフリカ戦での勝因と同じだろう。高いフィットネスと高い集中力で、相手の攻撃を防ぎきって、反則を誘いPGでリズムを作る。FB五郎丸の精度の高いPGで3点ずつ徐々に引き離していく展開は、今大会の日本代表の大きな戦術だろう。


今回の日本の勝利で、プールBはまさかの大混戦となった。のこり1試合を残した時点で、南アフリカ、スコットランド、日本がともに2勝1敗で並んでいる。このままいけば、W杯初の「3勝1敗でグループリーグ敗退」という事態があり得る。

決勝トーナメント進出を決めるのは、ボーナスポイントだろう。勝敗に関係なく「4トライ以上」で勝ち点1、負けた場合でも「点差が7点以内」であれば勝ち点1をもらえる。今のところ、日本代表に2点差で負け、トライを荒稼ぎしている南アフリカが勝ち点のうえでは優位にある。日本は南アフリカに勝って勝ち点4を得たが、南アフリカは日本から4トライをあげ、かつ2点差だったので、同じ試合で勝ち点2を得ている。そうしたボーナスポイントの差が、決勝トーナメント進出に影響してくるだろう。

3カ国の最終戦は、南アフリカが対アメリカ、スコットランドが対サモア、日本代表が対アメリカだ。アメリカは終盤で試合日程が過密になり、南アフリカ戦後に中3日で日本戦になる。今の日本の力と、予選敗退がほぼ確定のアメリカでは、おそらく日本が勝つだろう。すると日本のトライ数と、サモアースコットランド戦の結果が、決勝トーナメント進出を分けることになる。

日本代表が決勝トーナメントに進むには、サモアがスコットランドを4トライ以内に抑えて7点差以上で勝ち、さらに日本代表がアメリカに勝つのが一番だ。今の時点での勝ち点は、南アフリカ11、スコットランド10、日本8。
日本は、アメリカに勝てば勝ち点12、4トライ以上をとれば13になる。それ以上にはならない。

ということは、南アがアメリカに勝ち(勝ち点15)、スコットランドがサモアに勝てば(勝ち点14)、最終戦を待たずして日本の予選敗退が決まってしまう。
望みがあるのはサモアのほうだろう。サモアが最後に根性を見せて、スコットランドをロースコアに抑えて勝てば、日本代表にまだ望みがある。



というわけでサモアを応援しましょう。