「優れたリーダー」にはどんな性格が求められるのか?

この方法を人間の性格に適用するうえでは、「性格」をどのように測るかが大きな課題だ。この課題に最初に取り組んだのは、進化論で有名なダーウィンのいとこにあたる遺伝学者ゴールトンだ。彼は1884年に、人間の性格を表す英語表現を約1000個選び出した。  

この研究は心理学者に引き継がれ、1936年には4504語の性格用語が整理された。そして、これらを要約する研究が始まった。類似の性格用語をまとめた上で、それぞれの性格特性を被験者の自己評価や他者評価によって数値化し、その数値を要約する研究が続けられた。その結果、1990年代になって、人間の性格は5つの基本要素(ビッグファイブ)に要約できるという点で、研究者の間の意見が一致した。そのビッグファイブとは、外向性・開放性・協調性・良心性・情緒安定性の5つだ。  

外向性とは行動的な積極性であり、外向性が高い人は精力的で、冒険的だ。また、そのような行為を評価されたいという報酬感受性が高い。
 これに対して、開放性は認知的な積極性であり、開放性が高い人は好奇心が強く、思慮深く、創造的だ。報酬にはとらわれない。
 協調性は他者に協力的な性質であり、協調性が高い人は世話好きで、他人を信じやすい。
 良心性とは、責任感、勤勉性、計画性に関係しており、良心性が高い人は規則や計画を守り、任務をしっかりまっとうしようとする。
 情緒安定性は感情の制御に関係しており、情緒安定性が低い人は感情的であり、神経質で、緊張しやすい。  

優れたリーダーには、外向性・開放性・協調性・良心性・情緒安定性が高いことが求められる。ただし、これらが極端に高すぎる人は、リーダーには適さない。あまりに冒険的で創造的な人物は組織を危機に陥れがちだし、協調性が高すぎる人は決断を躊躇しがちだ。規則に忠実すぎると危機に柔軟に対応できないし、情緒安定性が高すぎる人は人間関係の機微に気付けない。行き過ぎない程度に、外向性・開放性・協調性・良心性・情緒安定性が高いことが、優れたリーダーの条件だ。  

ここで、これら5つの基本要素(ビッグファイブ)は、互いに相関がないことを条件として要約された因子であることに注意してほしい。例えば、外向性が高いからといって、開放性が高いわけではない(精力的な人が創造的であるとは限らない)。同様に、協調性が高いからといって情緒が安定しているわけでもない。このため、ビッグファイブ全てにおいて秀でた人は、希少な存在となる。


ビッグファイブ全てに優れ、なおかつ、能力も高い人の割合はさらに小さい。人間にはさまざまな能力があるが、その中で一般的な認知能力は「知能」と呼ばれる。知能とは、高度な記憶力や知的集中力によって、たくさんの情報を迅速かつ正確に処理する能力である。

ビッグファイブの中で、知能と関係しているのは、開放性である。好奇心が強く考えるのが好きな人ほどさまざまな知識を得やすいので、知能を高める機会が増える。

実際に両者には相関があることが分かっている。しかし、両者の相関は必ずしも強くなく、両者に関与する脳の領域は異なっている。知能には、その人の脳が持つ潜在的な演算能力と、学習や経験を通じて得られる知識量(学力)の両方が関わっていると考えられる。




漠然と思っていたことを書かれた感じ。