彼女のリクエストで、箱根にある「星の王子さまミュージアム」に行ってきました。


博物館だから、なんか星の王子さま関連の展示品が並べてあるんだろうと思ったらびっくり。物語にでてくるひとつの街が、まるまる再現してあるんですね。なんかコンセプトがディズニーランドに似ておる。



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ガスの点灯や消灯をくりかえす点灯夫


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パリの町並みを再現


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サン・モーリス・ド・レマンス城のフランス庭園



『星の王子さま』は、1943年に出版された、サン=テグジュペリ作の童話。作者はまだ飛行機の性能が未発達だった時代に空港郵便事業に従事し、パイロットとして世界各地を飛んだ。彼の作品にはパイロットとしての経験が色濃く反映されている。ジブリでおなじみの宮崎駿がサン=テグジュペリの影響を強く受けているのは有名だ。

『星の王子さま』は外国語学習の分野で有名な本だ。世界各国の言語に翻訳されており、日本でも簡単に買える。新しい外国語を学ぶときに最も有効な手段は、その言語で書かれた本をまるまる一冊丸暗記することだが、この『星の王子さま』はその目的によく合っている。

サン=テグジュペリの本では『夜間飛行』が僕の愛読書のひとつだ。郵便飛行の事業に賭けた男の尊厳をあますところなく描いた作品で、読むたびに気合が入る。しかし、実は僕はいままで『星の王子さま』を読んだことがなかった。この際、せっかく博物館に行くことにもなったので、さっそく読んでみた。

読んだ印象としては、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に近い。細かいストーリーよりも鮮やかなイメージをもった個性のあるキャラクターが印象に残る。しかしアリスとは違い、言語遊戯やロジック遊びに主眼があるのではなさそうだ。童話なので理にそぐわない場面も非現実的な描写も満載だが、イマジネーション豊かで、夢があふれる筆致ではあるまいか。フランスの童話というのはこういうものなのかな、と思わせる作品だ。

童話とはいえ、サン=テグジュペリはこの本を、おとなの読者を想定して書いたのではあるまいか。この本の冒頭の謝辞には、この作品を「フランスに住んでいて困難に陥っているあるおとなの人」に捧げる、と書いてある。「おとなの人」で差し支えがあるならば、「子どもだったころのレオン・ウォルト」に捧げる、とある。作者の友人のジャーナリスト、レオン・ウォルトというのは作者の友人のジャーナリストで、この作品が発表された第二次世界大戦当時、ウォルトはヨーロッパでナチス・ドイツの弾圧対象となっていたユダヤ人だった。

「大切なものは目に見えない」など、寓意のある言葉が散りばめられている。この本を読む大人はあまりストーリーの整合性などに目くじらをたてず、そこで描かれている世界、使われていることばを純粋に楽しめればいいのではないか。大人であれば、そういう読書のしかたも一通り身に付けておくべきだろう。


僕の彼女は『星の王子さま』の愛読者らしく、いろんな版を集めています。自分が好きな本にゆかりのある場所を訪れるというのはいいもんでしょうね。さしずめシャーロキアンのたくろふにしてみれば、ロンドンのベーカー街にあるシャーロックホームズ博物館を訪れるようなもんでしょうか。

ところでこの博物館、なぜ箱根にあるんだろう。
峠を克服したら、そこに星の王子さまがいた、という意図かな。



ゾウさん入りのウワバミのぬいぐるみホスィ