「全国学力調査 格差解消につなげよう」
(2019年8月1日 朝日新聞社説)
「全国学力テスト 英語のデータをどう生かすか」
(2019年8月1日 読売新聞社説)
「英語での表現力不足 教師任せにしていいのか」
(2019年8月1日 毎日新聞社説)


全国学力調査で「生徒の英語力が低い」という社説。全国紙では朝日、読売、毎日の3紙が採り上げていた。
この手の話題では、絶対に揺るがない基本がふたつある。

ひとつは、学力調査の結果がどのようなものであるにしろ、マスコミが「日本人の英語力は伸びています。大丈夫です」と言うことは絶対に無い、ということだ。マスコミには、事実はどうであれ、「日本人の英語力は低くあらねばならない」という確固たる信念がある。その背後には、1000億円産業である英語教育業界・予備校業界から得られる広告費がある。読者に危機感を煽って、不安にさせて消費を引き起こそうとするのは、マスコミの基本原理と言ってよい。

多くの読者は、今回の学力調査の結果を自分で精査しようとはしない。今回のような社説を読んで、なんとなく「ああ、やっぱり日本人の英語力は低いのか」という印象を得るだけだ。マスコミが撒き散らす印象操作を鵜呑みにする読者がほとんどだろう。

しかし今回の調査結果を実際によく見てみると、読解力と作文力は伸びている。中学・高校での英語教育が本来的には「大学に入って学問研究を行なえること」、つまり「英語の論文を読めて、英語で論文が書けること」と考えると、今回の調査結果はかなり肯定的に読み取れる。

マスコミは事実に関係なく「日本人の英語力は弱い」という結論ありきで記事を書くから、その改善案も必然的にいいかげんになる。根本的な対策を立てられては困るからだ。毎日新聞などは露骨に無責任さを全開にしている。

教師は部活動や事務作業など授業以外の業務で忙しい。そのため、課題は分かっていても、一方的に知識を伝える昔ながらのスタイルを変えられないのではないかということも、これまで指摘されてきた。教師任せにするのでなく、地域と連携して外国人住民との交流の機会を増やすなど、英語に親しむ環境を授業以外にも広げていく仕組みを考えるべきだ。
(毎日社説)


そもそも全国学力調査は、学校教育の改善のために行なうものだ。その結果を受けて「学校に頼らず、その辺に住んでる外国人に任せたほうがいいんじゃね?」という、雑な提言だ。絵に描いたような本末転倒。もはや「提言」と呼ぶのもおこがましい。この毎日新聞の無責任極まりない書き方から、新聞各紙は本気でこの問題を解決しようという気などさらさら無い、ということがよく分かる。


もうひとつの基本事項とは、そもそも中・高の英語教育で「コミュニケーション能力」なるものが一向に改善されない理由だ。誰もが本当の理由などよく分かっている。はっきり書いてはいないが、読売新聞がそれをちらちら伺わせている。

生徒の英語力を高めるには、教員の指導力向上が不可欠だ。文科省は、公立中学校で英検準1級以上を持つ英語教員の割合を50%にする目標を掲げたが、まだ36%と伸び悩んでいる。教員の自己研鑽が欠かせない。英語のコミュニケーション能力を身につけられるよう、自治体は、研修の態勢を整えるべきだ。
(読売社説)


「英検の準1級も受からない人間が、教壇で英語を教えている」という事実。もはや説明は不要だろう。日本の学校で音声会話に基づく「コミュニケーション能力」なるものが鍛えられない理由は簡単だ。そもそも教える側の教師にその能力がないからだ。教える側ができないのに、習う側ができるようになるはずがない。

現在、教壇に立っている現役世代の英語教師は、「自分たちが生徒の時代に受けた英語教育」と「これからやっていかなければいけない英語教育」が全然違う。必要となる英語能力を身につけていないし、そもそも自分がそういうやり方で教わっていないので、教え方が分からないのだ。

街の英会話学校の講師と違って、学校の教師に必要なのは専門分野の技能だけではない。教員採用試験も、専門技能が高い人を優先的に合格させるようにはできていない。各都道府県の教員採用試験で、専門能力の低い者が不可解な優先合格を受けるのは、もはや公然の事実だろう。

つまり、根本の原因となる「教師が無能だから」を抜本的に改善しようと正論を振りかざすと、いろんな虎の尾を踏んでしまうのだ。僕は個人的に、全英語教師のTOEIC、TOEFL、英検のスコア・資格を公表するべきだと思っている。しかしそんなことを実行しようとしたら、現場は大混乱になり、資格が認められるべきではない不適格英語教員が大量に出てくるだろう。

今回に限らず、「日本の英語教育は」のような話題が出てくるとき、マスコミは本気でその問題を解決しようとは決して思っていない。むしろ解決されては困る場合が多い。しかし学生時代に英語に苦労したのは日本人全員に共通している原体験であり、記事として読者の目を引きやすい。「決して解決しないので、叩くだけ叩ける」「困ったときにはこの話題さえ出しておけば、注目を集められる」という、お得なトピックなのだ。

それが証拠に、同じ議論を何年も何年も繰り返し、提言の内容だけでなく、議論の仕方からして全く変わっていない。変える気が全くない。マスコミの意図通り、これから先も問題提起だけ頻繁に行なわれながら、一向に解決しないままだろう。



マスコミにとって「解決されたら困る問題」のひとつ。




「全国学力調査 格差解消につなげよう」
(2019年8月1日 朝日新聞社説)
小学6年と中学3年を対象とする「全国学力調査」の結果が公表された。初めて中学の英語を科目に加え、読む・聞くだけでなく、話す・書くを含む4技能をテストした。ところが話す力の試験は、音声が記録されていない、雑音で聞き取れないなどの理由で、約1万5千人分(1・6%)の採点ができなかった。結果が返ってこない生徒は、がっかりし、あきれることだろう。設問は日常生活で英語を使う場面を意識した内容で、授業や勉強に取り組むうえで参考になるものだ。だとしても現場に多大な負担をかけて全員に話す力をテストする必要があるのか、疑問が突きつけられた。

学力調査の実施は今年で12回目になる。抽出調査にしたのを全数調査に戻したり、教科を増やしたりして肥大化の道をたどってきた。何のための調査なのか、改めてその意義を問い直してはどうか。

文部科学省が目的の最初にかかげるのは「義務教育の機会均等と水準の維持向上」だ。約50億円をかけて全数調査をする以上は、この目的の達成を何より考えなければならない。経済的な事情などから恵まれた学習環境にあるとはいえない地域や学校を、調査を通じて見いだし、支援をする。そのためにこそ活用すべきだ。

生徒に文章を読ませ、自分の考えを英語で書かせるなど、授業を工夫すれば学力を伸ばせることがわかったと文科省は分析する。重要な指摘ではあるが、さりとて現場の努力だけで格差を埋められるものではない。行政はどんなテコ入れをするべきか、施策を練り、社会に説明することが肝要だ。政府は近年、学力調査の結果が良くなかった学校に教員を追加配置する措置を講じている。ただ予算はまだ300校分で、公立小中の約1%にとどまる。拡大を急ぐとともに、設備面の支援も進めたい。  

自治体の側も無益な順位競争とは決別する必要がある。大阪市が昨年、各校の成績を校長らの評価に反映させようとしたのはその典型だ。事前に過去の問題を解かせて、好成績を狙う学校があるとの指摘も絶えない。今回、小中学校のどの教科についても、すべての都道府県・指定市の成績は平均値の上下10%以内に収まった。その中のわずかな差に一喜一憂しても意味がないのは明らかだ。

大切なのは日々の実践に生かせるヒントを探ることだ。例えば最近、デジタル機器を使った個別学習が注目されている。そうした試みの学力向上への効果を見極め、普及につなげることも、調査の大事な役割だろう。

「全国学力テスト 英語のデータをどう生かすか」
(2019年8月1日 読売新聞社説)
98万人に上る中学3年生の英語力に関する貴重なデータが得られた。今後の教育にどう生かすかが問われよう。

今年4月に小学6年生と中3を対象に実施した全国学力テストの結果が発表された。中3で、国語と数学に加えて、英語の「聞く・読む・書く・話す」の4技能を測るテストが初めて実施されたのが特徴だ。「話す」テストでは、生徒がマイク付きのヘッドセットを付け、パソコンの画面を見ながら質問に答えた。全国の平均正答率は3割にとどまった。「書く」テストの正答率も5割弱で、「聞く」「読む」の正答率を下回った。英語で伝える力の弱さが見て取れる。文部科学省は「主体的、対話的な学び」を推奨しているが、英語に関しては、まだ成果が出ていないと言わざるを得ない。

教育委員会は、今回の結果を分析し、指導方法の研究や、教員の効果的な配置につなげる必要がある。現場の教員も、生徒一人ひとりのデータから、どの技能が足りないのかを把握し、2学期以降の指導に役立ててほしい。

文科省は今回、授業改善の取り組みが、テスト結果に表れているかどうかを都道府県別に検証した。改善している学校の多い都県は、総じて好成績が出ていた。例えば東京都内の学校では、英語の授業の時に、クラスを習熟度別に再編し、1クラスを25人以下にしている。英語のレベルがほぼ同じで少人数になると、生徒の発言回数や質問の機会が増える。文科省は、優れた授業例に関する情報をインターネットなどで広く公開し、全国の学校が参考にできるようにしてもらいたい。

授業外で英語をよく使うと答えた生徒の多い自治体で、成績が良い傾向も見られた。海外のテレビやホームページを見る。地域に英語を使う住民や外国人観光客が多い。そうした要因が英語に親しむ場面を増やしていると、文科省はみている。学校には、楽しみながら英語に接する方法を提案したり、地域の外国人と交流できる催しを企画したりする努力が求められる。

生徒の英語力を高めるには、教員の指導力向上が不可欠だ。文科省は、公立中学校で英検準1級以上を持つ英語教員の割合を50%にする目標を掲げたが、まだ36%と伸び悩んでいる。教員の自己研鑽が欠かせない。英語のコミュニケーション能力を身につけられるよう、自治体は、研修の態勢を整えるべきだ。

「英語での表現力不足 教師任せにしていいのか」
(2019年8月1日 毎日新聞社説)
4月に全国の小学6年生と中学3年生を対象に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を文部科学省が公表した。今年の特徴は、例年の国語、算数・数学に加え、初めて中3で英語も実施したことだ。その結果、英語を聞き取ったり読み取ったりする能力は高かった。一方で、自分の伝えたいことを文章で表現することや、即興での会話が苦手という傾向が明らかになった。

調査の報告書は、子どもが英語で意見を述べ合うなど授業を実際のコミュニケーションの場とするよう提言する。授業を実践的な対話中心にする工夫が必要ということだろう。 子どもの英語力を高めるには具体的にどうすればいいのか。ヒントは、調査の一環で実施したアンケートの結果にある。

「英語の勉強は好きか」「英語の授業はよく分かるか」といった子どもの興味関心や理解度などを聞き、平均正答率との相関関係を調べた。すると、理解度は当然ながら、興味関心が大きい子どもほど平均正答率が高いという結果が出た。英語を好きになれるかどうかが大きなポイントだということだろう。

そうなるためには、授業で単語や文法だけでなく、外国の文化などを教えることも大事ではないか。国際化や情報通信技術の発達で、英語に触れる機会が増えていることも関心の深まりにつなげられる。今回の調査でも、英語のホームページを見たり、地域の人と英語で話したりと、授業以外で英語に接する機会が日常的にあると答えた子どもは3割を超えた。その子どもたちの平均正答率は高かった。

英語に限らず、知識はあっても応用は苦手という傾向は2007年に調査が始まって以来、他の教科についても指摘されてきたことだ。教師は部活動や事務作業など授業以外の業務で忙しい。そのため、課題は分かっていても、一方的に知識を伝える昔ながらのスタイルを変えられないのではないかということも、これまで指摘されてきた。教師任せにするのでなく、地域と連携して外国人住民との交流の機会を増やすなど、英語に親しむ環境を授業以外にも広げていく仕組みを考えるべきだ。