「政権継続という審判 多様な民意に目を向けよ」
(2017年10月23日 朝日新聞社説)
「衆院選自民大勝 信任踏まえて政策課題進めよ」
(2017年10月23日 読売新聞社説)
「日本の岐路 「安倍1強」継続 おごらず、国民のために」
(2017年10月23日 毎日新聞社説)
「安倍政権を全面承認したのではない 」
(2017年10月23日 日本経済新聞社説)
「自公大勝 国難克服への強い支持だ 首相は北対応に全力挙げよ」
(2017年10月23日 産経新聞社説)
「安倍政権が継続 首相は謙虚に、丁寧に」
(2017年10月23日 東京新聞社説)


第48回衆院選を受けての各社の社説。
非常にしらけた衆議院選挙だった。対決の構造すら明白ではなく、「政策」よりも「政局」に明け暮れた野党の迷走が目立つ。政局の保持に奔走した挙句、自身の主張が正反対になる本末転倒な候補者も多かった。こんな候補者ばかりが野党では政権奪取どころか現状維持も危うい。はっきりいって今回の選挙は、野党の自滅だろう。

今回の選挙がもうひとつ異様だったことは、マスコミ各社の報道のしかただ。特に朝日新聞、毎日新聞などの左派系の新聞社は、はじめから「ストップ安倍政権ありき」の偏向報道に終止した。迷走し趣旨が一貫しない野党をやたらと褒めちぎり、「世論は安倍政権不信で一色」という報道を繰り返した。

実際に蓋を開けてみたら、自民・公明の圧勝。公明党と合わせて311議席を獲得し、憲法改正の国会発議に必要な3分の2(310議席)を上回った。これにより、与党は単独で憲法改正が可能となった。
普通に考えれば、「世論が安倍政権不信で一色」という事前の報道は、嘘だったことになる。そういう与党批判の報道は、事実を反映した報道ではなく、新聞社がでっちあげた「あるべき姿」に読者を煽動しようとした姑息な試みと断じてよかろう。

与党の大勝という結果を受けてなお、朝日と毎日は自分たちの報道が間違っていたことを認めていない。「選挙の結果は大勝だが、それは有権者に支持されたという意味ではない」という謎理論を展開している。

選挙結果と、選挙戦さなかの世論調査に表れた民意には大きなズレがある。本紙の直近の世論調査によると、「安倍さんに今後も首相を続けてほしい」は34%、「そうは思わない」は51%。

国会で自民党だけが強い勢力を持つ状況が「よくない」が73%、「よい」は15%。

「今後も自民党中心の政権が続くのがよい」は37%、「自民党以外の政党による政権に代わるのがよい」は36%。
(朝日社説)

 衆院選中に実施した毎日新聞の世論調査では、選挙後も安倍首相が首相を続けることに「よいとは思わない」との回答は47%で、「よいと思う」の37%を上回った。
(毎日社説)


単純に考えれば、手前の新聞社で行った世論調査なるものと、実際の選挙の結果が違うのであれば、世論調査の方法に間違いがあったと考えるのが普通だろう。「世論調査」と簡単に言うが、その母集団はどういう選別によるものだったのか。「ストップ安倍政権」の民意を捏造すべく、そういう意見をもつ母集団に対して調査をしたのであれば、それは世論調査でもなんでもない。単なる情報操作だ。

選挙でこれだけ圧勝していながら「民意を反映しているわけではない」というのであれば、いったい何をもって「民意を問う」と言えるのだろうか。
選挙というのは、国民の民意を問うために行うものだ。その結果から目を背け、「国民の真意は別にある」というのであれば、それは民主主義の大前提そのものを全否定する姿勢だろう。朝日と毎日の記事からは、そもそも最初から事実を報道するつもりなどさらさらなく、「なんとしても安倍政権を葬らなければならない」というイデオロギオーが先に立ち、そのためなら情報操作だろうと民意捏造だろうと何をしようと構わない、という歪んだ正義感が透けて見える。

今回の選挙で、野党は明確な政策をもたないまま選挙戦に突入した。あれだけ離散集合を繰り返し、身の振り方に汲々としていた野党候補者には、練られた政策を準備する暇はなかっただろう。希望の党、立憲民主党、共産党、そろいもそろって選挙演説では「打倒・安倍政権」だけをひたすら叫び続けるだけに終止し、自分たちが政権をとった際に実施する政策については何も言わなかった。対立候補の悪口を言い続けるだけの選挙戦で勝てるわけがない。

どうしてそんな事態になってしまったのか。今回の社説の中でそれを最も端的に指摘しているのは、日本経済新聞だろう。日経は、今回の選挙の諸悪の根源を「前原誠司と小池百合子だ」と名指しで批判している。

いちばんの責任は民進党の前原誠司代表にある。いくら党の支持率が低迷していたとはいえ、衆院解散の当日という土壇場になって、野党第1党ができたてほやほやの新党「希望の党」に合流を決めたのは、あまりにも奇策だった。有権者に「選挙目当て」とすぐに見透かされ、7月の都議選に続くブームを当て込んで希望の党になだれ込んだ候補者はいずれも苦戦を余儀なくされた。
(日経社説)

希望の党を立ち上げた小池百合子代表の振る舞いもよくわからなかった。「排除」という物言いが盛んにやり玉にあげられたが、政策を同じくする同志を集めようとするのは当然であり、そのことは批判しない。
しかし、分身的存在だった若狭勝氏らが進めていた新党づくりを「私がリセットします」と大見えを切ったのに、自らは出馬しなかった。これでは政権選択にならない。都知事選と都議選の連勝によって、自身の影響力を過大評価していたのではないか
(同)


すべての原因は、小池百合子が自分の人気の効果を見誤ったことだろう。小池百合子は、都知事選、都議会議員選での連勝に気をよくして、有権者からの人気に酔っていた。おそらくその先に描いていた野望は「日本初の女性総理大臣」だっただろう。都知事を踏み台にして、国政選挙の政党を旗揚げしてその代表となる、という奇異な行動は、そう考えないと説明がつかない。

今回、小池百合子本人は出馬していないが、一方で希望の党は首班指名を行っていない。つまり今回の選挙で、仮に希望の党が第一党となり与党となったとしても、誰が総理大臣になるのか決まっていない状態だった。
自然な流れとしては、党代表の小池百合子が首相となる。しかし、それを選挙戦の段階で明らかにしてしまうと、あまりにもあざとい。都知事が単なる踏み台であったことが露骨すぎる。希望の党が首班指名をしなかったのは、単なる選挙戦術に過ぎず、そしてその本意は有権者にバレバレだった。

結局、希望の党の選挙戦術は「小池百合子人気」だけだったと言ってよい。どれだけ自分の人気に自信があったのか知らないが、その人気にあやかって尻馬に乗るのがいた。それが旧民進党代表の前原誠司だ。
前原は、旧民進党が単独で自民党と互角に渡り合えないことを自覚していたのだろう。だからどうする、という戦略として、小池百合子にすり寄った。都知事選、都議会議員選を爆勝した小池人気を利用すれば、安倍政権を蹴落とせる、という計算だったのだろう。

ところが、小池百合子の将来的な目論みは「自身が総理大臣になること」なもんだから、与党となった時の組閣に不要な人間は入れたくない。そこで「白紙のままの党要項に同意のサインをさせる」という無茶な踏み絵を行った。あまつさえ、「党の方針に沿わない候補者は『排除』する」という強い言葉で、土下座している旧民進党議員の頭を踏みつけた。それに反発するどころか、前原誠司以下、もともと民進党と異なる政策を強要されても、進んで小池百合子の靴を舐める議員が続出した。

この強権的な態度が、旧民進党のうち気骨のある議員の反感を買った。小池百合子に「排除」された旧民進党の残党は、「そんな政党の駒になるつもりはない」と反旗を翻し、新党として枝野幸男が代表となり立憲民主党を立ち上げた。
はじめと終わりだけを見ていると、枝野幸男のやっていることは「民進党から立憲民進党に、看板を付け替えただけ」に過ぎない。しかし、その看板を付け替えざるを得ない原因を作ったのは、前原誠司なのだ。枝野幸男のやったことは「党代表が狂ったことをしでかしたから、代表を見限って、自分たちで動いた」というだけにすぎず、筋は通っている。政策の内容に関しても、立憲民主党は民進党時代から掲げていることと一貫している。

枝野自身に非はないが、こうした野党の迷走は、結果として「野党同士のつぶし合い」という状況を生み出した。今回の選挙結果では、立憲民進党は54議席を獲得した。これは公示前の前職候補の3倍近い議席で、一気に第一野党の座に躍り出た。
しかし、この大量議席の獲得は、与党の議席を奪ったものではない。希望の党は、小池百合子の自信過剰が災いして48議席。これは公示前の57議席からかなり減っている。また共産党も、公示前の21議席から12議席に半減した。

つまり立憲民進党の得票は、「他の野党から奪ったもの」なのだ。いちばん割を食らったのは共産党だろう。共産党は別に政局の紆余曲折にも左右されていなかったし、政策の主張も終始一貫して支離滅裂だった。しかし、立憲民進党という「判官贔屓」に票が流れ、議席を減らす羽目になった。
安倍政権に批判的な有権者にとっては、別に共産党であろうと立憲民主党であろうと、どちらでもよかったのだろう。その中で、たまたま混乱の中でも筋を通して男を上げた枝野新党に票が集まったに過ぎない。

つまり今回の選挙で、立憲民進党の大量議席獲得をもって「安倍政権にノーが突きつけられた」というのは、ちょっと違う。正しくは「安倍政権にノーと言うための勢力として、他の野党にノーが突きつけられた」と言ったほうが正しい。

自民党は公示前勢力の290にやや足りない282議席だったが、今回は衆議院の定数そのものが減少しているので、ほぼ横ばいと言ってよい。公明党と合わせて311議席を穫り、3分の2をとれたのは大勝と言えるだろう。
つまり、国民は自民党に「ノー」を突きつけなかった。正確には「前はイエスだったけど今回からノー」という有権者は少なかった。自民党の支持者は「大して変わっていない」という結果だ。
新聞社が、立憲民進党の躍進を根拠に「自民党は全面承認されたわけではない」と言っているのであれば、結果は合っているかもしれないが、根拠が間違っている。

実際のところ、今回の自民党が勝ったのは、野党の自滅のおかげであって、もっと野党がしっかりしていれば自民党は惨敗していた可能性もあっただろう。選挙後の取材で小泉進次郎もそう言っている。
その薄氷の加減は、「国民が安倍政権に嫌気がさしている」という意味だけではなく、有権者は何を根拠に投票するのか、という有権者意識の反映だろう。

今回の選挙選で、マスコミ各社はやたらと「小池百合子を支持する有権者の声」なるものを取り上げた。中には「小池百合子に総理大臣をやってもらったらいいと思う」などと言うおばちゃんもいた。
しかし実際のところ、今回の選挙を通して、小池百合子に評価できることなど何もない。ではどうして視聴者はそういう小池支持に至るのか。

要するに、有権者は真面目に政策を検討しているわけではないのだ。なんとなく「この人よさそう」という「印象」だけで投票する。だから、その「印象」が崩れてしまったら、あっという間に得票数が減る。今回の小池百合子の失態は、そういう無責任な有権者意識を如実に反映しているだろう。
そもそも小池百合子の選挙戦術が、そういう無責任な有権者意識に乗っかり、印象と好感度だけで新党に票を呼び込もうとしたイメージ戦術だった。都議会程度の選挙であればそれでなんとかなったのかもしれないが、国政選挙となると政策と基盤がしっかりしてなければ太刀打ちできない。

前回の都議会議員選で「都民ファーストの会」が圧勝した理由も、別に有権者がその政策に賛同したからではあるまい。「小池百合子だから」というのが大半の理由だろう。なんとなくよさそう。いま旬でテレビにたくさん出てるから。そんな無責任な理由で投票したのであれば、その結果として惨憺たる政治が履行されても、文句は言えない。

今回の選挙で、小池百合子の求心力は低下を免れないだろう。2020年7月の都知事選まで人気を貯金し、東京オリンピック直前に国政に鞍替えして、オリンピック実施時には総理大臣になる、という青写真だっただろうが、その出だしですでに大きくつまづいた。都政を自身の人気向上に利用し、「都民ファースト」どころか都政をないがしろにして国政選挙に色気を出す都知事の行く末は、いったいどうなるのだろうか。

今回の選挙を、こうした「野党の自滅」として敗因を求める社説を載せたところで、何にもならない。今回の新聞各社で、最も自民党に厳しい論調を並べているのは、意外なことに保守系の産経新聞だ。産経新聞の社説は、野党の迷走についてはあまり紙面を割かず、与党がこれから取り組むべき「政策」をひとつひとつ採点している。

政権基盤を固め直した安倍首相は、自ら掲げた路線の具体化を急がなければならない。その最たるものが、北朝鮮問題である。選挙期間中に懸念された挑発はなかった。だが、北朝鮮は最近の声明で、米原子力空母への「奇襲攻撃」まで叫んでいる。核・ミサイル戦力を放棄する気はさらさらない。首相や与党は、対北圧力の強化という外交努力を選挙戦で訴えた。それにとどまらず、万が一、有事になったとしても、国民を守り抜く備えを、急ぎ固めておかなければならない。
(産経社説)

戦後の平和と安全を保ってきたのは、自衛隊と日米同盟の存在である。憲法9条は自衛隊の手足をしばり、国民を守る手立てを妨げることに作用してきた。安全保障の根本には、国民自身の防衛への決意がなければならない。その有力な方法は国民投票によって憲法を改め、自衛隊の存在を明記することだ。抑止力の向上に資するものであり、自民党はさらに国民に強く説くべきだ。
(同)

もう一つの国難である少子高齢化についても、対策は待ったなしの状況に追い込まれている。求められるのは、人口が減少する一方、社会の年齢構成が極端に高齢者へと偏ることへの対応だ。選挙戦で、自民、公明両党は教育や保育の無償化などを強調するばかりで、社会の仕組みをどう作り替えていくのか、全体像を描き切れなかった。全世代型の社会保障制度を構築するというのも、単なる子供向け予算の加算では許されない。既存制度の無駄を徹底して排すことが求められる。社会保障・税一体改革の再構築を含むグランドデザインを急ぎ描いてほしい。
(同)


どれも、自民党政権にとっては頭の痛い「宿題」だろう。野党にとっては、何十回と審議を重ねてもひとつの証拠も出せない森友・加計問題なんかより、こういう「正道」の政策議論によって与党を潰すほうが近道だと思う。野党が揃いも揃ってそういう政策議論に踏み込まないのは、なんのことはない、自分たちに真っ当な政策の代案がないからだ。

そして何よりも、有権者のほうが、そういう政策議論に無関心だからだろう。そういう無責任な有権者意識が、浮動票の行方が簡単に変わる原因に他ならない。「判断」ではなく「印象」で投票する人が多いうちは、第二、第三の小池百合子が出没し続けるだろう。



まぁ与党になっても馬脚を現すだけだったろうし




「政権継続という審判 多様な民意に目を向けよ」
(2017年10月23日 朝日新聞社説)
衆院選は自民、公明の与党が過半数を大きく超えた。有権者は安倍首相の続投を選んだ。森友・加計問題への追及をかわす大義なき解散――。みずから仕掛けた「権力ゲーム」に、首相は勝った。ただ、政権継続を選んだ民意も実は多様だ。選挙結果と、選挙戦さなかの世論調査に表れた民意には大きなズレがある。

本紙の直近の世論調査によると、「安倍さんに今後も首相を続けてほしい」は34%、「そうは思わない」は51%。国会で自民党だけが強い勢力を持つ状況が「よくない」が73%、「よい」は15%。「今後も自民党中心の政権が続くのがよい」は37%、「自民党以外の政党による政権に代わるのがよい」は36%。おごりと緩みが見える「1強政治」ではなく、与野党の均衡ある政治を求める。そんな民意の広がりが読み取れる。

ならばなぜ、衆院選で自民党は多数を得たのか。死票の多い小選挙区制の特性もあるが、それだけではあるまい。首相が狙った権力ゲームに権力ゲームで応える。民進党の前原誠司代表と希望の党の小池百合子代表の政略優先の姿勢が、最大の理由ではないか。

小池氏の人気を当て込む民進党議員に、小池氏は「排除の論理」を持ち出し、政策的な「踏み絵」を迫った。それを受け、合流を求める議員たちは民進党が主張してきた政策を覆した。安全保障関連法の撤回や、同法を前提にした改憲への反対などである。基本政策の一貫性を捨ててまで、生き残りに走る議員たち。その姿に、多くの有権者が不信感を抱いたに違いない。

例えば「消費増税凍結」「原発ゼロ」は本紙の世論調査ではともに55%が支持する。希望の党は双方を公約に掲げたが、同党の政策軽視の姿勢があらわになった以上、いくら訴えても民意をつかめるはずがない。与党との一対一の対決構図をめざして模索してきた野党共闘も白紙にされた。その結果、野党同士がつぶし合う形になったことも与党を利した。

その意味で与党が多数を占めた今回の選挙は、むしろ野党が「負けた」のが実態だろう。旧民主党政権の挫折から約5年。「政権交代可能な政治」への道半ばで、野党第1党が散り散りに割れたツケは大きい。与党の圧倒的な数を前に、野党が連携を欠けば政権への監視役は果たせず、政治の緊張感は失われる。その現実を直視し、選挙と国会活動の両面で協力関係を再構築することこそ、野党各党が民意に応える道だ。

留意すべきは、権力ゲームからはじき飛ばされた立憲民主党がなぜ躍進したのかだ。判官びいきもあろう。そのうえに、民進党の理念・政策や野党共闘を重んじる筋の通し方への共感もあったのではないか。「上からのトップダウン型の政治か、下からの草の根民主主義か」。枝野幸男代表が訴えた個人尊重と手続き重視の民主主義のあり方は、安倍政権との明確な対立軸になりえよう。

では、首相は手にした数の力で次に何をめざすのか。自民党は公約に初めて改憲の具体的な項目を明記した。一方で首相は選挙演説で改憲にふれず、北朝鮮情勢やアベノミクスの「成果」を強調した。経済を前面に掲げ、選挙が終わると正面から訴えなかった特定秘密保護法や安保法、「共謀罪」法を押し通す。首相が繰り返してきた手法だ。今回は改憲に本腰を入れるだろう。

だが首相は勘違いをしてはならない。そもそも民主主義における選挙は、勝者への白紙委任を意味しない。過去5年の政権運営がみな信認され、さらなるフリーハンドが与えられたと考えるなら過信にすぎない。

首相の独善的な姿勢は、すでに今回の解散に表れていた。首相は憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を3カ月も放置した末、あらゆる審議を拒んで冒頭解散に踏み切った。与党の多数は、そんな憲法と国会をないがしろにした政争の果てに得たものだ。そのことを忘れてはならない。

民意は改憲をめぐっても多様だ。本紙の世論調査では、自民党が公約に記した9条への自衛隊明記に賛成は37%、反対は40%だった。短兵急な議論は民意の分断を深めかねない。主権者である国民の理解を得つつ、超党派による国会の憲法審査会での十分な議論の積み上げが求められる。

憲法論議の前にまず、選ばれた議員たちがなすべきことがある。森友・加計問題をめぐる国会での真相究明である。首相の「丁寧な説明」は果たされていない。行政の公正・公平が問われる問題だ。勝ったらリセット、とはいかない。民意の分断を防ぎ、乗り越える。そんな真摯(しんし)で丁寧な対話や議論が、いまこの国のリーダーには欠かせない。政権のおごりと緩みを首相みずから率先して正すことが、その第一歩になりうる。



「衆院選自民大勝 信任踏まえて政策課題進めよ」
(2017年10月23日 読売新聞社説)
安倍政権のすべてを支持するほどではない。だが、政治の安定を維持し、経済再生や日本の安全確保できちんと結果を出してほしい。それが、今回示された民意だろう。

第48回衆院選は、自民党が過半数を大きく上回る議席を得て、大勝した。公明党との連立政権が継続する。安倍首相は2012年衆院選以来、国政選で5連勝だ。首相は大勢判明後、「安定した政治基盤の下、一つ一つ結果を出したい」と強調した。

首相は、来年秋の自民党総裁選での3選に向けて、足がかりを築いた。内政、外交両面でさらなる長期的な政権戦略を練り、その布石を打つことが大切である。

我が国は今、デフレ脱却、財政再建、北朝鮮の核・ミサイルなど様々な課題に直面している。今の野党に日本の舵かじ取りを任せることはできない。政策を遂行する総合力を有する安倍政権の継続が最も現実的な選択肢だ。有権者はそう判断したと言えよう。

希望の党の結成や、民進党の分裂・合流、立憲民主党の結成という野党再編の結果、小選挙区で野党候補が乱立し、反自民票が分散した。これが、自民党に有利に働いた点も見逃せない。公示直後の世論調査で、内閣支持率は不支持率を下回った。首相は、自らの政策や政治姿勢が無条件で信任されたと考えるべきであるまい。与党の政権担当能力が支持されたのは確かだが、野党の敵失に救われた面も大きい。

安倍政権の驕おごりが再び目につけば、国民の支持が一気に離れてもおかしくない。首相は、丁寧かつ謙虚な政権運営を心がけ、多様な政策課題を前に進めることで国民の期待に応えねばなるまい。

与党は、19年10月の消費増税による増収分の使途変更で教育無償化などを拡充すると表明した。バラマキを排し、真に必要とする家庭を支援する制度を設計する必要がある。達成不可能になった20年度の基礎的財政収支の黒字化という目標に代えて、新たな財政健全化の道筋も明示すべきだ。安倍政権の原点は経済再生だ。アベノミクスの加速へ、既存政策の焼き直しでなく、成長戦略を多角的に強化することも急務だ。

北朝鮮情勢は今後、さらに緊迫する可能性がある。日米韓3か国が連携し、金正恩政権への圧力を強めつつ、中国の協力を得て、核放棄を迫り続けねばならない。

立憲民主党は当初、希望の党に合流できない民進党の左派・リベラル系議員の受け皿として出発したが、安倍政権に批判的な層に幅広く浸透し、躍進を果たした。労働団体による個別議員への支援に加え、共産、社民両党との選挙協力も効果を上げた。

今後、民進系の無所属議員らと連携する可能性がある。政府・与党に何でも反対する「抵抗政党」に陥らず、建設的な論戦を仕掛けることが求められよう。希望の党が安全保障関連法を容認し、安保政策で自民党と差のない保守系野党を目指す姿勢は、評価できる。従来の不毛な安保論争に終止符を打つことは重要だ。

希望の党は一時、政権獲得を目指す構えだった。だが、小池代表の民進党からの合流組への「排除」発言などで失速した後は、盛り返せず、苦戦した。消費増税凍結、30年の原発ゼロなど、付け焼き刃の政策は具体性を欠いた。「しがらみのない政治」の名の下、政治経験の乏しい新人の大量擁立も疑問視された。組織基盤がなく、「一枚看板」の小池氏の人気に依存した新党の構造的な脆もろさを印象づけた。小池氏の地元の東京で振るわず、全国でも当選者の大半を民進党の移籍組が占めた。小池氏の求心力低下は避けられまい。

政策面で民進党に先祖返りしたり、離党して民進党の再結集を図ったりすることは、有権者を愚弄ぐろうする行為であり、許されない。

共産党は、立憲民主党に左派系の票を奪われ、伸び悩んだ。今回の衆院選では、憲法改正が本格的な争点となった。自民、公明、希望、維新の各党は改正に前向きである。各党の合計議席が衆院の3分の2を大きく上回ったが、改正項目に関する足並みはそろっていない。

自民党は今後、自衛隊の明記、緊急事態条項など4項目に関する党内論議を再開し、党の考え方をまとめる。各党も、無為に議論を先送りせず、自らの見解を策定すべきだ。超党派の合意形成に向けた重要な一歩となるだろう。



「日本の岐路 「安倍1強」継続 おごらず、国民のために」
(2017年10月23日 毎日新聞社説)
衆院選は自民党がほぼ公示前の勢力を維持し、公明党を含む与党で3分の2に達した。私たちは安倍晋三首相が抜き打ち的に衆院解散を表明して以来、「日本の岐路」と題して、この選挙を論じてきた。 従来にも増して、今回の選挙が日本の分岐点になると考えたからだ。具体的には首相に権力が集中する「安倍1強」を継続させるか否かの選択であった。

そもそも今回の総選挙には、安倍首相が来年秋の自民党総裁選で3選を果たすための実績作りという狙いがこめられていた。首相が3選されれば、2021年秋まで政権担当が可能になる。第1次政権の1年分を含め、安倍首相の在任期間は憲政史上最長の10年近くに及ぶこともあり得る。そうした前提のうえで有権者は継続を選んだ。

 勝利した首相にはそれだけのエネルギーが補充されたと考えられる。ただし、首相の役割は特定のイデオロギーへの奉仕ではない。首相はおごることなく、恵まれた政治資源を国民のためにこそ活用すべきだ。国民生活にとって、今、最も優先されるべきは、少子高齢化と財政危機の下で社会保障制度を持続可能にしてゆくことだ。25年に団塊世代のすべてが75歳以上となり、大都市圏を中心に介護、医療の需要や財政負担が急増する。同時に若者、子育て支援など全世代型の施策も迫られている。 一方で、国と地方の借金は1000兆円を超す。社会保障の持続と財政再建を両立する「魔法のつえ」などない。給付と負担のバランスの必要を説くことは、強い基盤を持つ政権だからこそ可能なはずだ。

来週発足する第4次内閣にとって喫緊の課題は、北朝鮮危機への対応だ。トランプ米大統領が来月5日に訪日する。日米の連携は重要だが、軍事的圧力に傾斜するトランプ政権に同調して不測の事態を招かぬよう、細心の注意を払う必要がある。

安倍首相の最終目標が憲法改正にあることは疑いの余地がない。選挙結果を受けて、首相は改憲についても国民の理解が得られたと強弁する可能性がある。首相は9条に自衛隊の存在を明記したいと訴えてきた。実力組織を憲法にどう位置づけるかという問題提起を私たちは否定していない。

ただし、安全保障法制や特定秘密保護法の時のように性急に憲法を扱ったら、それこそ国の針路を誤らせる。国民に信頼されない改憲作業ほど、危険なことはない。将来を見据えて、自衛隊の役割を冷静に論じ、広く国民の同意を得ていかなければならない。憲法の論点は自衛隊に限らない。参議院の役割の見直しも含め、衆参両院の憲法審査会で建設的議論を深めるべきだろう。

着実な成果を上げていくためにはこれまでの「安倍政治」の手法や中身を改め、押しつけ型の政権運営を見直す必要がある。衆院選中に実施した毎日新聞の世論調査では、選挙後も安倍首相が首相を続けることに「よいとは思わない」との回答は47%で、「よいと思う」の37%を上回った。

それでも今回、安倍内閣が信任を得られたのは野党側の事情による。小池百合子東京都知事が結成した希望の党は一時、与党を脅かす存在になりかけていた。だが、民進党議員の参加をめぐる露骨な選別が逆風を呼んだ。公約や党内統治のずさんさも露呈し、急に失速した。

他方で小池氏の強引なやり方に反発して民進党の左派リベラル勢力は立憲民主党を結成し、両党は競合関係となった。政権批判票の分散が、小選挙区制度の下で自民を利した。小池氏の劇場型手法に多くの有権者が不安を抱き、自民党を「よりまし」と判断したのではないか。 行政の公正さが疑われた「森友・加計」問題の解明作業は中断したままだ。首相は選挙での勝利を口実として、過去の問題だと片付けるべきではない。

野党では立憲民主党が公示前勢力を大幅に上回り、躍進した。「安倍1強」が続く国会の審議を与党ペースにせず、緊張感を作り出すには野党の姿勢がカギを握る。建設的な政策論争を期待したい。



「安倍政権を全面承認したのではない 」
(2017年10月23日 日本経済新聞社説)
 この1カ月の大騒ぎは何だったのだろうか。降って湧いたような突然の衆院選は、これまでとさほど違わない与野党の議席配分で幕を閉じた。選挙戦の当事者たちは我が身の生き残りに必死だったのだろうが、有権者が頭を悩ますようなしっかりした選択肢が提供されたとは言い難かった。

いちばんの責任は民進党の前原誠司代表にある。いくら党の支持率が低迷していたとはいえ、衆院解散の当日という土壇場になって、野党第1党ができたてほやほやの新党「希望の党」に合流を決めたのは、あまりにも奇策だった。有権者に「選挙目当て」とすぐに見透かされ、7月の都議選に続くブームを当て込んで希望の党になだれ込んだ候補者はいずれも苦戦を余儀なくされた。

希望の党を立ち上げた小池百合子代表の振る舞いもよくわからなかった。「排除」という物言いが盛んにやり玉にあげられたが、政策を同じくする同志を集めようとするのは当然であり、そのことは批判しない。しかし、分身的存在だった若狭勝氏らが進めていた新党づくりを「私がリセットします」と大見えを切ったのに、自らは出馬しなかった。これでは政権選択にならない。都知事選と都議選の連勝によって、自身の影響力を過大評価していたのではないか。

選挙戦では終盤になって、もうひとつの新党「立憲民主党」が急速に勢いづいた。これをもって、「リベラルの復権」ともてはやす向きもあるようだが、それは早計だろう。立憲民主党をつくったのは「改革保守」を名乗った希望の党に受け入れてもらえなかった面々である。初当選は社会党だった人もおり、中道より左寄りなのはその通りだ。

だが、憲法改正に関する考え方をみても完全に一枚岩ではない。政策が支持されたというよりは(1)排除されたことへの判官びいき(2)希望の党の失速で行き場を失ったアンチ安倍政権の有権者の後押し――などが重なりあった結果であり、一過性の人気に終わるかもしれない。

この選挙をひとことで総括すれば「野党の自滅」である。自民党と公明党を合わせて、定数の過半数を大幅に上回り、選挙前と同水準の議席を獲得したとはいえ、野党候補の乱立に救われた選挙区も多い。両党が「与党の勝利」「安倍政権への全面承認」と受け止めているとしたら、大いなる勘違いである。

有権者は自公の連立政権に軍配を上げたが、野党よりはややましという消極的な支持にすぎない。自民党に取って代われる受け皿さえあれば、簡単に見限る程度の支持であることは、都議選で身に染みたはずだ。主な世論調査を見ても、8月の内閣改造・自民党役員人事を受けて一時は上向いた安倍内閣の支持率は、選挙戦に入って再び低下した。ほとんどの調査で、不支持が支持を上回っており、不支持の理由も引き続き「首相の人柄が信用できない」が多い。森友・加計学園問題などで生じた政権への不信感はなお払拭されていないと見るべきだろう。自公が過半数を占めたことで「みそぎは済んだ」などと浮かれないことである。

 疑惑をかけられた議員の表舞台への登用や、強引な国会運営を押し進め、「魔の2回生」が「魔の3回生」になるようなことがあれば、いずれ手痛いしっぺ返しを食らうことになろう。順風だった橋本龍太郎内閣がロッキード事件の有罪議員の入閣をきっかけに瓦解への道を歩んだ例があることを強調しておきたい。

今回の衆院選勝利によって、安倍晋三首相は来年9月の自民党総裁選で3選を果たし、2021年まで政権にとどまる可能性が出てきた。そうなれば、戦後最長の佐藤栄作首相どころか、戦前の桂太郎首相を抜き、憲政史上最長の超長期政権になる。問題はそれに見合う業績を上げているかどうかだ。政権返り咲きからでも間もなく5年だが、アベノミクスひとつとっても「道半ば」「7合目」というばかり。生活がよくなった実感があまりないという国民が大半だろう。

「安倍1強」と呼ばれる強大な権力を何に使うのか。経済を再生し、国民の暮らしを守る。それこそが政治の役割だ。「初の憲法改正」という宿願ばかり追い求め、肝心の原点を置き去りにしてはならない。



「自公大勝 国難克服への強い支持だ 首相は北対応に全力挙げよ」
(2017年10月23日 産経新聞社説)
北朝鮮危機と少子高齢化という、日本に差し迫った国難を乗り越える。安倍晋三首相の呼びかけに、国民は強い支持を与えた。第48回衆院選で与党の自民、公明両党は大勝し、安定的な勢力を確保したうえで、引き続き政権を運営することになった。

野党側は、選挙を目前に民進党が「分解」したことにより、立憲民主党、希望の党などが新たに誕生した。だが、明確な対立軸や危機克服の具体策を示すことなく終わった。政権の受け皿として、大きな支持を得る勢力とはなり得なかった。

政権基盤を固め直した安倍首相は、自ら掲げた路線の具体化を急がなければならない。その最たるものが、北朝鮮問題である。選挙期間中に懸念された挑発はなかった。だが、北朝鮮は最近の声明で、米原子力空母への「奇襲攻撃」まで叫んでいる。核・ミサイル戦力を放棄する気はさらさらない。 首相や与党は、対北圧力の強化という外交努力を選挙戦で訴えた。それにとどまらず、万が一、有事になったとしても、国民を守り抜く備えを、急ぎ固めておかなければならない。

北朝鮮危機と少子高齢化という、日本に差し迫った国難を乗り越える。安倍晋三首相の呼びかけに、国民は強い支持を与えた。第48回衆院選で与党の自民、公明両党は大勝し、安定的な勢力を確保したうえで、引き続き政権を運営することになった。野党側は、選挙を目前に民進党が「分解」したことにより、立憲民主党、希望の党などが新たに誕生した。だが、明確な対立軸や危機克服の具体策を示すことなく終わった。政権の受け皿として、大きな支持を得る勢力とはなり得なかった。

政権基盤を固め直した安倍首相は、自ら掲げた路線の具体化を急がなければならない。その最たるものが、北朝鮮問題である。選挙期間中に懸念された挑発はなかった。だが、北朝鮮は最近の声明で、米原子力空母への「奇襲攻撃」まで叫んでいる。核・ミサイル戦力を放棄する気はさらさらない。首相や与党は、対北圧力の強化という外交努力を選挙戦で訴えた。それにとどまらず、万が一、有事になったとしても、国民を守り抜く備えを、急ぎ固めておかなければならない。

選挙戦で、自民、公明両党は教育や保育の無償化などを強調するばかりで、社会の仕組みをどう作り替えていくのか、全体像を描き切れなかった。全世代型の社会保障制度を構築するというのも、単なる子供向け予算の加算では許されない。既存制度の無駄を徹底して排すことが求められる。社会保障・税一体改革の再構築を含むグランドデザインを急ぎ描いてほしい。

無償化論についても、その道筋には明確さに欠けるところが少なくない。公明党は私立高校授業料の実質無償化まで言い出した。待機児童解消に向けた32万人分の保育の受け皿整備を前倒しする。消費税増税が実現するまでの間、運営費などはどう捻出するのか。

首相は少子高齢化に対処するために消費税増税が必要だと判断した。税率を10%に引き上げるまでの2年間を有効に使い、これに耐えられる力強い経済の実現に全力を挙げなければならない。

足元の景気は回復傾向を強めているが、国民の実感が乏しい点は政権も認めざるを得まい。企業や家計が将来を展望できる成長基盤を、確実に築いてもらいたい。政府・与党に、選挙の勝利に浮かれているいとまはない。舵(かじ)取りを間違えられない荒海を進んでいるとの認識が常に必要である。



「安倍政権が継続 首相は謙虚に、丁寧に」
(2017年10月23日 東京新聞社説)
衆院選結果を受けて、自公両党の連立政権が継続する。安倍晋三首相(自民党総裁)は続投するが、謙虚に、丁寧に国政に当たるべきは言うまでもない。台風が接近し、雨の中、投票所に向かった有権者も多かったのではないか。離島などでは投票を繰り上げたり、即日開票を断念するなど、悪天候の影響もあった。期日前投票が過去最高になったのも、天候悪化で投票所に行けない事態に備え、早めに投票したいとの思いもあったことだろう。先人が勝ち得てきた貴重な選挙権だ。無駄にしてはならない、との熱い思いを感じざるを得ない。

選ばれた議員や、政権を託された政党が、こうした有権者の思いに誠実に応えるのは当然である。その際、留意すべきは政権を支持しなかった有権者も含めて、政治はすべての国民のために行わなければならない、ということだ。言うまでもなく、日本国憲法は国会議員を「全国民の代表」と定める。自らを支持した有権者だけの代表ではない。このことをまず肝に銘じるべきだろう。

安倍首相が消費税増税分の使途変更と北朝鮮対応のための政権基盤強化を争点に掲げて解散に踏み切った衆院選だった。自民党は単独で過半数(二百三十三)を超えた。安倍首相は衆院選の勝敗ラインを、公明党の獲得議席を加えた「与党で過半数」としており、選挙結果を見る限り、消費税増税分の使途変更と、「対話」よりも「圧力」に重きを置いた北朝鮮対応は、形の上では有権者に支持されたことにはなる。

とはいえ、自公連立政権を率いる安倍首相が積極的に支持されたと断言するのは早計だろう。報道各社の世論調査によると、総じて、安倍首相の続投を支持しないと答えた人は、支持すると答えた人を上回る。

今年七月の東京都議選で、自民党は歴史的惨敗を喫した。このときの敗因には、学校法人「森友」「加計」両学園の問題をめぐる首相自身の不誠実な答弁や「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法成立を強行した強引な国会運営、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報隠しなど、安倍政権のおごりや緩みが挙げられた。

地方自治体の選挙だが、痛手だったのだろう。首相は八月三日、内閣改造後の記者会見で、深々と頭を下げ「さまざまな問題が指摘され、国民の皆さまから大きな不信を招く結果となった。改めて深く反省し、国民の皆さまにおわび申し上げたいと思う」と述べた。

しかし、今回の選挙戦の街頭演説では、森友・加計問題に自ら言及することはなかった。批判ばかりでは何も生み出さない、と言いながら、旧民主党政権時代をくさして、同党に所属していた議員がつくった新たな政党を批判する。わずか二カ月前、深い反省やおわびを表明した首相の低姿勢は、どこに行ってしまったのか。

安倍首相の続投を支持しない人が多いにもかかわらず、自公両党が過半数の議席を得るのは、一選挙区で一人しか当選しない小選挙区制を軸とした現行の選挙制度が影響していることは否めない。小池百合子東京都知事が慌ただしく「希望の党」を結成し、民進党が事実上分裂して一部が合流する一方、これに反発する枝野幸男元官房長官らは「立憲民主党」を立ち上げた。野党勢力が分散すれば、与党が有利になるのは当然だ。

小池氏の準備不足や民進党の混乱を見越した解散なら、選挙戦略としては巧妙だが、国政全体に責任を負う首相としては誠実とは言えまい。希望の党は当初の見通しよりも勢いが失速したが、立憲民主党の伸長は、安倍政権に対する批判の強さと受け止めるべきだ。自民党は憲法改正を公約の重点項目に初めて掲げたが「改憲派」の各党間にも考え方や優先順位に違いがある。日程ありきで拙速に議論を進めるべきではない。  成長重視のアベノミクスや消費税増税も、支持されたとはいえ選挙戦で問題点も明らかになった。原発依存も同様だ。引き続き、幅広く国民の声に耳を傾け、柔軟な対応に努めるべきである。

そして政治に対する信頼の問題である。森友・加計両学園をめぐる問題がすべて解明されたわけではないし、選挙を経たからといって免責されるわけでもない。国会として引き続き解明に全力を挙げるのは当然だ。ましてや野党側がひるむ必要はまったくない。首相自身、問題の解明に進んで協力し、丁寧な説明に努めるべきである。「謙虚に、丁寧に、国民の負託に応えるために全力を尽くす」。ほかならぬ、首相自身の言葉である。