電通の国内売上が激減 社員が「働き方改革」への本音を吐露


「現在も会社から言われて22時退社を徹底していますが、そのせいでクライアントから反発を食らって参っています。

夕方、担当者から『急遽、明日の朝イチでプレゼン資料が必要になりました。お願いできませんか』と電話がかかってきた時も、『22時退社なので……』と正直に断って平謝りしています。それでも粘られる場合は局長に相談しますが、当然『ダメだ』。『局長判断でできません』と伝えざるを得ない。

先方から不満を言われることも少なくない。いままでなら絶対に『喜んで』と即答していましたから、本当に大丈夫かと思うこともあります」

かつて電通のクライアント企業の担当者だった男性は、電通が置かれた状況の難しさを語る。

「電通が『ブラック企業批判』を受けるのは、広告を出す側としては印象が悪い。最近ではこうした問題がネットで炎上して不買運動につながりますから。電通への批判が自分の会社の商品に飛び火したらたまりません。

一方で、わがままな話ですが、クライアントとしては、これまで通り『何でもやってくれる電通さん』を続けてもらいたい。電通の経営陣はこのジレンマに苦しんでいると思いますよ」



夕方に連絡してきて「明日の朝イチまでに資料を作れ」なんて甘ったれてんのか


もしそういうニーズがあるとして、それを自社の内部で用意できず、広告代理店に丸投げしてるのなら、それはその会社にその仕事を請け負うだけの能力がはじめから無いということだろう。淘汰されて然るべき無能企業だ。
そういう無能のニーズを汲み取ることで、広告代理店というのは成り立ってきた面があるのだろう。考えてみれば、すべての企業が自社で広報する能力があれば、原理的に「代理店」などというものは不要なのだ。

代理店が企業にとっての「無茶振りをこなす便利屋」に成り下がり、その蓄積が企業体質となり、構造的な歪みとなって、人命が失われた。代理店だけの問題ではなく、代理店を奴隷のようにこき使い、偉そうに上から目線で無茶な要求をする企業にも責任の一端がある。


「ある媒体にクライアントの不祥事の記事が出そうになれば、部長級、局長級が媒体に出向いて土下座してでもそれを止めるということもあった。是非はともかく、そこまでしたから今の電通があるのは間違いない」
(元電通社員の藤沢涼氏)



代理店を使って不祥事をもみ消そうとする企業
その土下座をへらへら請け負う代理店



両方、頭おかしい。



もし広告代理店が、AM9時ーPM5時のような定時出勤よりも、クライアントの急な要求に応えられなければならない業種であるならば、勤務体系を根底から変えなければならないだろう。

たとえば、クライアントからの急な要求に対しては徹夜で勤務をしてもよい。イベントのような短期集中的な仕事のときには24時間働いてもよい。そのかわり、月単位で勤務時間をしっかり計上して、それに見合う休暇を翌月にとらなければならない。

1日24時間が勤務時間に等しい船員などは、20日間ほどの乗船勤務のあとでは、1週間〜10日の休暇をとらなければならない。要するに、勤務時間と休暇の割合が一定になっていればいいのだ。業種によって勤務形態は様々なのだから、それに応じて制度のほうを変えるしかあるまい。

ところが実際にはそうなっていないのは、管理職の無能によるのだろう。勤務時間をフレックスにして、労働時間に見合う休暇を消費しなければならないシステムにすると、そのシステムの継続性は上司の労働時間管理能力にすべてが懸かってくる。仕事の分配と、各個人の勤務時間を、適切に采配するマネジメント能力が必要になる。

現在の広告代理店がそのような制度になっていないのは、それができる人材がいないからなのだろう。いれば、そもそも新入社員が過労自殺するような事態にはなるまい。
日本人は、金よりも時間に汚い。売上金をちょろまかそうとする経営者は少なくても、従業員の勤務時間を超過窃取しようとする経営者は後を絶たない。形がなく眼に見えないためか、「時間はいくらでも搾取して構わない」と思ってはいないか。

そういう時間にだらしない根本体質が変わらない限り、広告代理店の勤務形態は変わるまい。表向きはフレックスを導入し、累加で休暇をとらなければならないシステムにしたとしても、すぐにそのシステムは形骸化し、実態は変わらないままだろう。再び「そのシステムのもとでは出るはずのない自殺者」が出るだけのことになる。



嫌な世界だ。