たくろふのつぶやき

春は揚げ物。

2015年11月

千種類の中華料理レシピを記憶した周富徳の方法

周富徳さんが亡くなって。意外なところかもしれないですけど、僕、周富徳さんの言ったことで、スゲェ俺の中で座右の銘とまではいかないまでも、「はぁ~、そういうことか」って思ったことがあって。
落語家時代に、師匠にスゲェ言われたんだけど、一切分からなかったことで、落語を辞めたあとに、周富徳さんに言われて「そういうことか」って分かって。

周富徳さんって、千種類くらいの中華料理のレシピが全部頭に入ってるっていう風に言われてて。下手したら、もっと覚えてたらしいんだけどね。凄い量のレシピが入ってるって言うわけ。

落語の凄い名人も、千とまでは言わないまでも、数百って台本が頭の中に入ってる、と。それをどうやって覚えたら良いかってことに関して、若手の頃の俺にしたら、分からないわけ。5個目のネタを教わると、1個目のネタを忘れてたから(笑)。サボりサボり、30~40のネタを教わったと思ったけど、できるのは…在庫は5個(笑)だから新しいプログラムを入れる前には、昔のプログラムを消さなきゃいけなかったから

それで、落語は辞めてしまった後なんだけど、周富徳さんに会って、その話にたまたまなって。それで、「どうやって覚えるんですか?」って話をしたら、


「細かいレシピは覚えていない」


って言うのね。
でも、



「千種類の中華料理の味は覚えている。味と食べた記憶の見た目は覚えている。」



「そうすると、自ずから『この味とこの色を出すには、これとこれが要る』ってことが分かる。その後は、中華料理のルールに従って、『この食材とこの食材は、こちらを先に入れる』とか、『これにこういう味をつけるには、この下ごしらえをする』って分かる」って言うのね。

そのことを聴いて、なんか俺の中で喋るってことも、覚えるってことに関しても、ちょっと革命みたいなことがあったの。「基本のルールが入りさえすれば、後はそんなに細かに覚える必要はない」って思って。落語の口調とか喋るリズムのルールをちゃんと覚えていれば、毎回、毎回、セリフを覚えることじゃないってことが分かって。

「分かった~3年前に分かってればぁ~」ってことを思い出したのとともに、ご冥福を祈らせていただくのが、こんなに番組前半で入っていいのか、そんなにしんみりして良いのかってことですけど…ご冥福をお祈りします。

(伊集院光) 




いつでも知識を脳内で再生産できる礎が、本当の「基礎」

ラグビーW杯2015 決勝戦

wcup2015final



ラグビーW杯2015 決勝戦
ニュージーランド 34ー17 オーストラリア


ニュージーランドが終止リードを保ち、34-17で宿敵オーストラリアを圧倒、2年連続3回目の優勝を飾った。
3回の優勝は単独で最多回数となった。2年連続で連覇したのはワールドカップ史上初。また、ニュージーランドにとっては自国開催以外の大会で初の優勝となった。

試合は、決勝戦とは思えないほどボールが流れる得点の取り合いとなった。普通、決勝戦はミスからの失点を防ぐため、慎重な試合運びとなり、ノートライに終わることも珍しくない。今回の決勝戦がこれだけトライの応酬となったのは、両チームのバックロー陣の精力的な働きによるところが大きい。

オーストラリアの両FLスコット・ファーディー、マイケル・フーパー、No.8のデービッド・ポーコック、対するNZのジェローム・カイノ、リッチー・マコウ、キアラン・リードのバックロー陣のせめぎ合いは、この決勝戦の大きな見どころだった。とにかく、よく走る。密集戦では必ずこの6人がボールを取り合っていた。効果的なジャッカルを見せ、ターンオーバーに次ぐターンオーバーで試合がめまぐるしく動いた。これだけハイレベルのバックロー対決が見られる試合は、そうあるものではない。この試合での両チームのバックローの働きは、バックローのための教科書として使えるほどのものだ。

試合はハイレベルの密集戦で、反則ひとつで3点を失う、決勝トーナメント独特の緊張感のある試合展開そのままに進む。前半の序盤にNZが3つのPG、オーストラリアが1つのPGを得た。
決勝トーナメントのようなノックアウトステージでは、自陣の反則が即3点を失う命取りになる。だから当然ながら攻撃の組み立てとしては、おおまかに陣地を稼ぎ、敵陣でプレーすることが最優先事項となる。

その試合運びに成功していたのは、NZのほうだっただろう。いくらオーストラリアのキックオフで試合が始まっても、気がついたらオーストラリア陣内で試合が進んでいる。アーロン・スミスとダン・カーターの指揮で、FWとBKの両方が「とりあえず敵陣」という意思統一ができていた。
それに比べると、オーストラリアのほうは若干、局地戦での勝敗に拘りすぎているように見えた。どんなにブレイクダウンでマイボールを確保し続けたとしても、それが自陣でのフェイズの積み重ねであれば意味がない。フェイズを積み重ね、マイボールを確保し続けるという忍耐戦は、敵陣で相手の反則を誘うときに効果があるものだ。自陣でやっても仕方がない。オーストラリアは確かに密集戦に強かったが、その強さの使い方に若干の迷走が見られた。

スクラムは互角、モールはむしろオーストラリアが押していた。しかしいかんせん、ラインアウトに差がついていた。NZは今大会を通して、ラインアウトからのターンオーバー率が異様に高い。No.8のキアラン・リードやLOのサミュエル・ホワイトロックが相手ラインアウトをことごとくインターセプトし、自陣ボールに変えてしまった。
オーストラリアのモールの優勢は、そのほとんどが自陣内で展開したものだ。NZにしてみれば、敵陣内で5mや10m押されたところで、試合全体の趨勢には関係ない。ところがオーストラリア陣内でのラインアウトのターンオーバーは、一発で致命傷になり得る。自分たちの長所を上手く使いこなすことに関しては、NZのハーフバックス陣のほうが、より上手く指揮をとっていたと見るべきだろう。

NZは敵陣でプレーし続けることにより、オーストラリアFW陣を疲労させ、集中力の低下からマークのギャップを作る伏線をうまく張っていた。それが前半39分、終了直前のNZのトライに結びつく。
このトライは、いかにもNZというべき、ショートパスからギャップを作り出す手本のようなトライだった。特に、外に意識を集中させておいて内側にノールックパスを出したCTBコンラッド・スミスのパスは秀逸だった。そこに走り込んだSHアーロン・スミスが完全にギャップを作り出し、リッチー・マコウが相手マークを引きつけ、フリーになったミルナースカッダーが外側で完全に余った。このプレーを可能にさせてしまった原因は、NZの効果的な陣地獲得でオーストラリアFW陣が緊張感と疲労を強いられてしまったことにあるだろう。NZのほうが、明らかに、試合展開を自ら作り出す手腕に秀でていた。

前半で16ー3という差がつき、一方的な試合になるかと思われたが、後半にNZの「弱点」が露呈する。バックスリーのキック処理能力だ。
今回のNZのウィングは、攻撃に特化して選抜されている。スタメンの両WTB、ミルナースカッダーとジュリアン・サベアは、ボールを持って走る時には鬼のような力を発揮する。ミルナースカッダーは細かいステップで狭いエリアを走り切る能力があり、サベアは身体能力の高さと当たりの強さで相手ディフェンスを撥ね返す力がある。準々決勝の対フランス戦では、1対3の局面で3人のディフェンスを吹っ飛ばしてトライを奪っている。2人ともキャップ数が少なく、経験が少ないながらも、高い攻撃能力でオールブラックスのスタメンを勝ち取っている。

その替わり、経験不足という弱点がディフェンス面で顕著だった。キック処理が、歴代オールブラックスのバックスリーとは比較にならないほど弱い。特にミルナースカッダーは、何度もボックスキックで裏を取られ、ハイパント勝負では一本もマイボールを確保することができなかった。キック処理に弱い両ウィングを補っていたのは、高い捕球能力をもつFBベン・スミスだった。NZのキック処理は、ベン・スミスのキャチング能力でなんとか保たれていたと言ってよい。

そのベン・スミスが後半12分、危険なタックルでシンビンを受けてしまう。これによりNZの後方守備が後手に回り、オーストラリアが試合の流れをつかんでしまう。
シンビン直後のオーストラリアのラインアウトからのモールのトライは、仕方がないだろう。これはオーストラリアの既定路線であり、あの地域でラインアウトを与えてしまってはどうしようもない。

問題は、そのあとの後半24分に与えたトライだ。オーストラリアはNZのバックスリーの弱点を掴んでおり、ベン・スミスが抜けた後に執拗にキックで陣地を稼ぐ攻撃に出た。キック処理の戻りが遅いミルナースカッダーはその処理に失敗し、オーストラリアの怒濤の逆襲を許してしまう。守備のギャップをつくってしまい、人数的に不利な状況をつくりだし、オーストラリアCTBテビタ・クリンドラニのトライを許してしまう。

結局、NZはベン・スミス退場の間に、2トライ2コンバージョンを許し、4点差まで追い上げられてしまう。
ここで落ち着いてNZの窮地を救ったのは、やはりと言うべきか、「世界最高のSO」ダニエル・カーターだった。

カーターは、1トライで逆転される状況の後半70分、まさかのDGを決め、オーストラリアと観客の度肝を抜く。このDGは、地域的にも体勢的にも、かなり難易度の高いDGだった。しかもW杯の決勝という緊張感の高い舞台で、あの地域、あの時間帯、あの状況で、あのDGを決められるのは、驚異的な技術と精神力だ。
カーターは、自身4回目のW杯でありながら、決勝戦に出場するのは初めてだ。前回大会の優勝時は準々決勝で負傷退場し、決勝戦はスタンドからの観戦だった。自身のラグビー人生の集大成として、今回の決勝戦に賭ける思いは相当なものだっただろう。そういう思い入れが気負いにならず、土壇場の状況で最高のプレーを見せた。決勝戦のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるのも当然だろう。

手が届くかに思われた時間帯に貴重な3点を奪われ、オーストラリアFW陣の運動量が明らかに陰った。あのDGが与えた精神的なダメージはかなり大きかっただろう。
NZはその動揺を見逃さず、一気にメンバーを入れ替えて走力で圧倒する策に出た。NZが長らく世界ランキング1位を保っている理由、「最後の10分間の驚異的な強さ」の具現だ。スクラムの前列を全員入れ替え、疲労の濃いFLジェローム・カイノを下げ、キックの調子の悪いSHアーロン・スミスさえ替えた。キック処理の悪いミルナースカッダーを下げ、キャッチング能力と走力の高いボーデン・バレットを投入。オーストラリアからすれば、悪夢のような選手交代だろう。

FBに入ったボーデン・バレットは、今までハイパントでやられ続けたお返しとばかり、ハイパントを上げ自ら取り、独走してとどめのトライを奪った。このキックボールの追いかけっこが、まるで勝負にならなかった。交代したばかりのバレットと、すでに長い距離を走らされ続けて疲労が溜まったオーストラリアWTB陣との競争では、勝負は明らかだろう。
トライ後のコンバージョンも、ダニエル・カーターが当然のように決め、34ー17。気がつけばダブルスコアでのノーサイドとなった。

結局オーストラリアは、NZの試合運びの上手さにしてやられた。局地戦では、オーストラリアはかなり優勢に試合を進めていたと思う。しかし、その「局地」をどこに設定するかで、NZとオーストラリアは力の出し方の配分に差が出てしまった。オーストラリアのバックロー陣の体を張ったプレーは、十分にNZに対抗し得るものだった。それだけに、そのバックロー陣の奮闘を、うまくリードに結びつける「大局的な試合勘」が求められる展開だった。

NZは2大会連続で連覇を果たし、W杯の連勝記録を14に伸ばした。ベテランが多い印象のあるNZだが、今大会を最後に代表を引退すると目されている選手は、実は5人しかいない。FWはすでに次の世代がスタメンのポジションを掴んでおり、弱点だったバックスリーもこれからの4年間でさらに経験を積むだろう。試合の最後には、キャプテンのリッチー・マコウが退き、「後継者」サム・ケインが勝利のピッチを踏んでいる。この最後1分での選手交代は、試合としては意味がないが、NZのこれからの4年間の始まりとしては大きな意味をもつだろう。NZを世界王者の位置から引き摺り下ろすためには、他国はよほどの修練を積む必要があろう。


今大会を振り返ると、グループリーグからの全試合を含め、上位国と中堅国の差が著しく縮まった大会だった。毎回大会で必ず存在する、100点ゲームが一回もない。敗れた国も決して勝負を諦めず、最後まで戦う姿勢を貫いた。3位決定戦で南アに敗北確定だったアルゼンチンが、試合終了直前の最後の最後に意地のトライを奪ったのは、その象徴だろう。

そういう中堅国の躍進を引き出したのは、間違いなく日本代表の戦いっぷりだっただろう。過去7大会でわずか1勝だった弱小チームが、南アに勝ち、3勝1敗という見事な成績を残した。個々のレベルアップとチーム戦術の融合が、非常にうまくいった好チームが次々と大躍進を果たした。

しかし、そういう躍進チームにとってさえ、上には上がいる。優勝候補のアイルランドは、フィットネスを倍増させたアルゼンチンに惨敗した。そのアルゼンチンは、さらにフィットネスの差を見せつけられてオーストラリアに負けた。そのオーストラリアは、ゲーム展開の妙を備えたNZに敗れた。どんなに強くなっても、それでも勝てない相手がいる。そういう、ラグビーのもつ底知れなさを、存分に味あわせてくれた大会だった。スリリングな展開が多く、退屈な試合が非常に少ない、とても面白い大会だった。

ひとつ残念だったのは、開催国イングランドが早期に敗退したことだろう。やはり大会は、開催国の活躍があると大いに盛り上がる。そこから日本代表が学ぶことは大きい。次回の開催国として、日本代表にとっての次の4年間はすでに始まっている。さらなる躍進を遂げ、日本が世界を驚かす4年後であってほしい。






また熱い4年間が始まる。
ペンギン命

takutsubu

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バックナンバー長いよ。
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