録画ですから。ラグビーW杯2015 準々決勝3, 4戦

2015年10月18日

ラグビーW杯2015 準々決勝1, 2戦

ラグビーW杯は決勝トーナメントに進み、ノックアウトステージの一発勝負になった。その緒戦2試合。
ともに、チームのキーマンとなるSOの交代が勝負の流れを大きく分ける試合となった。



南ア ウェールズ


南アフリカ 23ー19 ウェールズ


混戦に次ぐ混戦、相手を凌ぎ合い、リードを奪い合うシーソーゲーム。とても見応えのある試合だった。ウェールズは、勝てた試合だったと思うが、もう一歩のところで南アの豊富な試合経験の前に屈した。怪我人が続出しながら一切弱音を吐かず、イングランドを破った時の固いディフェンスで南アの怒濤の攻撃を防いだ気力が報われなかった。

決勝トーナメントくらいの段階になると、一発抜けてトライという展開はほぼ望めない。だから自陣で反則をしたときのPGが命取りになる。この試合も、序盤は反則からのPGの応酬だった。
両キッカーの技量はほぼ互角。南アSOのハンドレ・ポラード、ウェールズSOのダン・ビガーは、ともに今大会屈指のキッカー。正確無比なキックで、緊張感のある試合を演出した。

どちらかというとキックはウェールズのダン・ビガーのほうに分があったと思うが、与えたペナルティーはウェールズのほうが多かった。ブレイクダウンの反応と人数が、どうしても南アのほうが若干高い。幾度もターンオーバーを奪い、ウェールズは攻めても攻めてもボールを取り返される。

FW戦はもともとウェールズの弱点で、イングランドに勝ったときもスクラムやブレイクダウンはことごとくイングランドに押されていた。ウェールズの強みは機動力とスピードのあるBKなので、最初から後ろを走らせてワイドに外展開をして南アFW陣を走らせるゲームプランのほうが適切だったと思う。

しかしウェールズは戦術を変更することなく、中盤の地域でも縦突破でFW戦を仕掛ける南アに、真っ正面からぶつかった。なんとなく、敵の戦術におつきあいしてしまった印象だ。試合終盤、疲労して足がつっている選手は、むしろ南アのほうが多かった。ウェールズは自分たちの強みを出せることなく、敗れ去った印象がある。

試合の趨勢を大きく変えたのは、戦術的選手交代だったと思う。FW戦で徐々に押されたウェールズは、なんとキーマンのSOダン・ビガーを下げてしまう。別に疲労度が高かったわけでも故障したわけでもない。ただ単に「なんとなく押されてきたので攻撃のリズムを変えたい」程度の意図だったのではないか。この交代にはビガーも納得がいかなかったらしく、チームスタッフに声高に詰め寄るシーンが写されていた。

もともとウェールズがイングランドに勝利した予選リーグの試合は、ダン・ビガーの精密なPGでもぎ取ったものだ。しかしPGだけではなく、キックと展開をうまく絡めて味方BK陣を指揮し、局地戦だけでなく大局的に陣地を稼ぐ戦術のほうに、ビガーの能力は発揮されていたと思う。そのビガーを下げてしまったことで、ウェールズの攻撃はとたんに流動性を失う。

百戦錬磨の南アは、さすがにその間隙を見逃さなかった。ビガーの交代のわずか1分後、南アはとうとうウェールズの固いディフェンスをこじ開けることに成功する。密集戦から南アのキャプテンSHフーリー・デュプレアがラインぎりぎりに飛び込み、逆転トライを奪う。このトライで精神的にも得点的にもダメージを受けたウェールズは、ずるずると後退を続け、試合の流れを変えられないままノーサイドとなった。

ビガーの交代時は後半34分。のこり6分の場面だ。ウェールズは19-18で、わずか1点のリードだった。南アの経験と実力から考えれば、このわずか1点を守りきって勝てると考えるのは甘いだろう。しかしウェールズ首脳陣は、この1点を守りきることを優先し、ディフェンスの密度を考えてビガーを下げたように見える。その守りの姿勢がチームに伝播し、さらに悪いことに南アにも伝わり、一気に逆転された。最後のトライを取られた時に、オフィシャルの国際放送では沈痛した表情で首を振るビガーの表情を抜いて放送していた。誰にだって、このトライにつながる理由は明白だっただろう。

逆に南アは、追いつめられた段階で、ウェールズのわずかな動揺を見逃さず、きっちりトライを取り切った。あの場面でトライを取ったデュプレアの冷静さは、見事と言うほかはない。勝負勘というか、ここ一番の力の出し方というか、「経験」という広い言葉で覆うには見事すぎる集中力だった。

それはひとつには、勝利を確信した場面で油断し、最後の最後で逆転トライを取られて負けた日本戦での敗北が教訓となっていたこともあるだろう。もともと地力で勝る南アが、敗北によって謙虚さと緻密さを取り戻し、この大一番での勝負に活かした。ウェールズが4強以上に進出するためには、こういう「あと一歩」の底力が必要となるだろう。




NZ フランス


ニュージーランド 62ー13 フランス


準々決勝第2試合。戦前の予想とは異なり、思いがけない大差がついた。決勝トーナメントでの62点は過去最多。49点差という大差も最多記録だ。

フランスはいつもワールドカップでNZと対戦するときには、まったく別のようなチームになって圧倒する。2007年大会では今回と同じ準々決勝でNZと対戦し、破っている。前回大会でも決勝で対戦し、8-7とわずか1点差まで追いつめた。2007年の対戦ではSOフレデリク・ミシャラクが正確なDGを連発し、3点差ずつじわじわと追い上げての逆転勝利だった。今回もミシャラクはスタメンに名を連ねており、NZにとっては「不吉なSO」として警戒の対象となっていた。

前半12分に、早くも試合が動く。そのミシャラクが、キックの際に太腿を痛めて途中交代するというアクシデントに見舞われた。あまつさえ、そのキックがNZにチャージされ、トライを奪われた。この「NZキラー」のゲームメーカーが退くことによって、フランスはゲームプランの変更を余儀なくされた。

得点のリードとキーマンの負傷交代というふたつのダメージによって、フランスの守備に動揺が広がる。毎回、NZと対戦するときには鬼のようなタックルでNZのFW陣を封じていたフランスのキャプテンFLデュソトワールの、タックルが全然決まらない。NZのアタックを受ける際、FLやCTBにギャップを半分ずらされ、一人を止めるのに二人を要し、外側を余らせてしまう、というパターンでトライを連取された。

一方のNZは、予選プールで俊足BK陣を「封印」し、敢えてFW勝負で縦突破を図っていたゲームプランを一変させた。最初からBKの外展開で、ワイドにボールを散らす、従来のNZの試合運びをようやく使ってきた。おそらく、決勝トーナメント1回戦で苦手のフランスと対峙することを想定し、研究されないように隠していたのだと思う。

今回のNZのバックスリーは、ジュリアン・サヴェア(35)、ネへ・ミルナースカッダー(2)、ベン・スミス(41)など、W杯本番までのキャップ数が比較的少ない。それだけ、事前に相手に研究できる余地がないということだ。2007年のフランスの勝利は、緻密な事前研究によってNZの攻撃パターンを分析していたのが要因だが、それと同じことが今回はできなかった。NZのBK陣にいいように走られ、WTBのミルナースカッダーに1本、サヴェアに至ってはハットトリックのトライを取られている。終わってみればNZは合計9トライ。普通であれば、決勝トーナメントで、しかもフランス相手に取れる数字ではない。

NZの攻撃陣で見事だったのは、両LOだ。ブロディー・レタリックは、フランスSOミシャラクのハイパントをチャージしてそのままトライをとり、試合序盤で早くも試合の流れを大きく引き寄せた。またサミュエル・ホワイトロックは密集戦でフランスのボールによく絡み、幾度もターンオーバーを演出した。両LOはラインアウトでも空中戦を制し、フランスにまったく付け入る隙を与えなかった。守って良し、走って良し、突っ込んで良し、飛んでよし、強力なNZのFW陣にあって、このふたりの存在感は物凄いものがあった。

今回の試合で非常に特徴的なのは、PGによる得点が極めて少ないことだ。決勝トーナメントではなかなかトライは取れないため、勝敗は実質上、PGで決まるのが普通だ。しかしこの試合では前後半を通じて、NZは1本、フランスは2本しかPGを決めていない。

これはひとつには、後半にはすでに大差がついたため、3点をちまちま稼いでも意味がないので、フランス側がほとんどのペナルティーでラインアウトを選択していたことも理由である。しかし、試合前半でもほとんどPGの機会がなかった。

それはすなわち、NZもフランスも、自陣での反則が非常に少なかったことを意味する。特にNZは、フランスが自陣で反則を犯しても、アドバンテージを活かして切れ目無くプレーを続けた。フランスは疲労が増し、たとえ味方の反則であってもプレーが一旦切れることを望んでいたように見える。しかしNZはそんなフランスの疲弊を見透かしたように容赦なく連続攻撃で責め立て、9つのトライを量産した。

試合終了時、フランスは自陣深くのマイボールスクラムからインゴールにボールを確保した場面で、自らボールを蹴り出して試合を終わらせた。そのシーンだけを見ても、フランスがもはや「早く試合を終わらせたい」という精神状態だったことが分かる。

結局、試合序盤でSOのミシャラクが負傷交代したことで、フランス側は流れを完全に失った。その動揺を回収できないまま戦況を悪化させ、悪夢のような大差になった。前回大会の決勝では、NZのほうがSOダン・カーターを失い、同じような状況に陥っている。SOがもたらす試合展開の流れが、非常に重要であることを示す試合だったと思う。


これで準決勝の第一試合は、南アフリカ対NZに決まった。ここ4年間の戦績は、NZが6勝1敗と大きく引き離している。今大会のコンディションを見ても、NZのほうに分があるだろう。南アフリカは、日本戦やウェールズ戦のように、反則からリズムを失う流れがどうしても足枷になる。しかし、ウェールズ戦の最後に見られたように、日本戦での敗北を活かして粘り強く最後まで戦う姿勢は、いままでの南アフリカにはなかったファクターだろう。1点を争う好ゲームになることが期待できる。



久々にオールブラックスらしさ全開の試合だった。


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takutsubu at 14:00│Comments(0)Sports 

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