『「スーパーウーマン」に学ぶ 老いない勉強法』(草野仁)
(日本経済新聞)

1986年に「世界ふしぎ発見!」が始まるとき、担当者が黒柳さんに出演依頼をしたところ、最初は「私はクイズ番組には出ません」とキッパリ断られたといいます。負けず嫌いな黒柳さんは、解けない問題があることを視聴者に見られたくなかったのだそうです。そもそもこの番組は、正解した人は頭が良いということではなく、人間の考え方や行動に多様性があることを示そうとする狙いがありました。その点を強調して、私は説得を試みました。

黒柳さんは1週間考えた末、出演を承諾してくれました。でも、そこで一つだけ条件を付けたのです。

「音楽やお芝居の問題ならば、人に負けない知識があります。でも、科学やスポーツはもちろん、地理、歴史の分野は知らないことばかり。そこで考えたのですけど、この番組に出ることをきっかけにして、腰を据えて勉強しようと思うんです

黒柳さんが要求した条件というのは、番組収録の1週間前でいいから、「開拓時代のアメリカ」「大航海時代」といった程度の、大まかなテーマを教えてほしいとのことでした。そうすれば、収録までの間にいろいろと本を読んで、大ざっぱなイメージを頭に入れることができるというわけです。結局、ほかの4人の回答者にも同じ条件を与えることで番組が始まりました。  

その話を聞いて、私は正直言って半信半疑でした。  
「勉強するとはいっても、忙しい方だから難しいのではないか。たかだか娯楽番組に出演するくらいで、本当に勉強するのだろうか」

そんなある日、黒柳さんは真っ赤に充血した目でスタジオにいらっしゃいました。聞けば、今週は本を3冊買い込んだのに、非常に忙しくて1冊目に手がかかったのが前夜の10時。そして、難しい内容ばかりの本を必死に読んで頭に入れ、ようやく3冊目を読み終わったのがついさっき。午後の3時だというのです。
これを聞いて私は驚きました。テレビやお芝居の仕事が終わってから、一睡もしないで17時間も本と格闘していたのです!  

30年近くたった今でも、毎週平均5冊の本を読んでいるといいます。「音楽家について」というこれまた抽象的なテーマを出したときには、なんと週に16冊も読んだそうです。こんなことが続けられる人は、芸能界だけでなく、広い世界でもそうはいないでしょう。私が、心の中で「スーパーウーマン」と呼んでいるゆえんです。

 黒柳さんと接していると、「人間は、頭脳を使いすぎて病気になることはない」ということを身に染みて感じます。私たちは、もっと頭を使って活動しなくてはならないと思うのです。使わないままで死滅する脳細胞の方が問題です。何かに関心を持ったら、スピードとエネルギーを注いでいくのが一番。目の前に黒柳徹子さんといういい実例があるからにほかなりません。  

私も彼女を見習い、最近になって様々なことを勉強し直そうと考えるようになりました。「わからない」「知りたい」ということがあったら、すぐにネットを使ってでも調べるようにしています。




御年、81歳。