Robert B. Parkerの推理小説 “Mortal Stakes” (『失投』)という作品。
アメリカの野球業界の裏側を描いた名作として名高い。

ボストン・レッドソックスのエースピッチャーが、八百長に加担し、相手に故意に打たせている疑惑が生じる。懸念を抱いたレッドソックスのオーナーは、探偵スペンサーに調査を依頼する。

オーナーはエースピッチャーのことを心配しており、もし八百長疑惑が実証されるだけでなく公然の噂になってしまったら、球界から追放されてしまうのではないか、と思っている。

「彼はとてもいい若者だ。万一、ほかの連中がわしと同じように妙な気持ちがし始めたら、彼は破滅だ。彼は球界から追放されるが、誰かが実証する必要すらない。彼はYokohama Giantsで投げることも出来なくなる。」
(菊地光訳。ハヤカワ・ミステリ文庫)


横浜ジャイアンツ





ジャイアンツは東京だぞ。




Robert B.Parkerは執筆の前にかなり緻密な調査をする人なので、調べ間違えとも思えない。たぶん、オーナーに故意に間違った台詞を言わせることで、「日本球界のことを分かってない、ちょっと抜けた人物」として描こうとしたのかもしれない。

“Mortal Stakes”の初版刊行は、1975年。今から40年も前だ。その当時は、日本のプロ野球選手がメジャーリーグに移籍することなど、夢のまた夢の時代だった。
それから40年が経ち、レッドソックスにもヤンキースにも日本人選手が在籍する時代になった。当時ではこういう書き方をしてもよかったのかもしれないが、今ではとんでもない騒ぎになるだろう。

ちなみに名訳で知られる翻訳者の菊地光は、この箇所を誤植として、「彼はトーキョー・ジャイアンツで投げることも出来なくなる」と訳している。



昔の小説を読むとこういうのがたまに出てきて面白い。