「ディスる」という言葉があるらしい。


なんでもdisrespectの略で、「軽蔑」「無礼」に相当する。
相手に対して攻撃的な言動をとったり、非難の言葉を露骨に表明することを「ディスる」と言うらしい。
この言葉の語源を調べると、ちょこちょことHip-Hopという分野の音楽の話が出てくる。どうやら、嫌いな相手を攻撃したり、貶めたりすることで話を膨らます音楽性があるのだそうだ。

別にどの音楽がどういう哲学を持っていようが勝手だが、こういう、他人を貶めることを基本原理とする表現形態が、世間一般に広く理解を得られるとは思えない。長く触れていると、心が濁ると思う。正論、暴論に関係なく、人は他人を攻撃するような調子を長く浴びていると、人相が悪くなる。友達の悪口ばかり言っている人と、常に人を褒め尊敬している人と、どちらが付き合いやすいだろうか。

むやみやたらに人を攻撃したり、言葉が汚なかったりする人の共通点は、自分に自信がないことだ。自信がないから、自立できない。自分で自分を支えることができないから、他人にエネルギーをぶつけることで自分を保とうとする。そういう人に限って、非難し攻撃する対象から反撃を浴びると、簡単に潰れる。まことに見苦しい。

「ディスる」という言葉の背景にある価値観もさることながら、この造語、言葉としてもいかがなものかと思う。
disrespectの「dis」は、prefix(接頭辞)と呼ばれる、生産性の高い接辞だ。もとの単語に否定の意味をつける時に広く使われる。日本語で言うところの「非」「未」「不」「反」などに相当するだろう。
appear(出現する)に対するdisappear (消える)が一番簡単な例だが、それ以外にもdisagree (反対意見)、disappoint (失望)、disapprove (不賛成)、disbelief (不信)、disadvantage (不利)など、いろいろある。

で、略語にするときに、語根を省略し接頭辞だけを残していいものなのか。
「dis」がつく単語はdisrespectだけではないのだから、どのdis-なのか分からない。他のdis-系の単語を略する必要が請じた時に困るのではあるまいか。造語のセンスとして、非常にお粗末だ。
Los Angelsを略すときに、定冠詞の「Los」だけを取って「ロス」と呼ぶのと、同じ程度の恥ずかしさだ。そういう人はLas Vegasを称しても「ラス」と言うのだろうか。

まぁ、「ディスる」に相当する行為が頻繁に飛び交うような低俗な環境に身を置く人達の言語感覚など、その程度、ということだろう。
そういう人達は、自分の心と魂を汚す行為を繰り返し、自分達の言語感覚を錆び付かせ、他人の反応を気にしながら、自分の世界の中だけで生きていけばいいと思う。



やってて楽しいのかな。