先日、勤務先の大学で国際シンポジウムが行われましてね。


僕の務めている学部では、年に一回、海外から招待講演者を招いて国際シンポジウムを行うのが恒例になっています。去年は僕がコーディネーターをやりました。去年のトピックは「語学教育と国際化の現状」とか何とか、言語系のシンポジウムだったので「おまえやれ」的に仕事が廻ってきました。

シンポジウムの運営って大変なんですよ。まぁ一番大変なのは、招待講演者を選ぶことと、その招聘に必要な手続きなんですけどね。
当日の運営も大変ちゃ大変ですが、その当日まで持っていく過程がまぁ大変なんです。会場設営とか宿泊とか交通とかは大学事務局がやってくれるんですが、発表の内容やシンポジウム全体の統括に関わるネタ合わせは、コーディネーターが窓口になります。

何人か来校する招待講演者は、シンポジウム前日にはじめて顔を合わせます。だから、それまでに他の講演者の講演内容や、パネルディスカッションや質疑応答の打ち合わせは、すべて事前にメールで打ち合わせます。
僕も去年は講演者の方々と毎日のようにメールを打ち合い、来校する時までに相互理解がちゃんとできているように準備しました。

で、今年ですが。
今年の国際シンポジウムは、地球温暖化に焦点をおいた地球環境問題に関してのシンポジウムでした。僕の専門分野とは全く畑違いです。
僕はたまたま、このシンポジウム運営を取り扱う学内委員会に所属していますが、今年はシンポジウム運営チームに入っていませんでした。去年やりましたからね。
そんな感じでのんびり構えていたんですが、シンポジウムの2週間前になって事務局からメールが届きました。


「たくろふ先生、申し訳ありませんが、シンポジウム運営スタッフに入って、当日の運営をお手伝いして頂けませんでしょうか」



・・・俺、地球環境問題なんて分かんねぇよ?



敢えて言うならば、温暖化で南極の氷が溶けるとペンタンがピンチになるので温暖化断固許すまじ、くらいのことでしょうか。



直前ミーティングで配布された資料によりますと、当日の僕の役割は「講演者接待係」。
そんなこと言われても。接待って何をすればいいんでしょうかね。
メイド服でも着てお茶を配ればいいんでしょうか。
講演者がゴルフクラブを振り回したらすかさず拍手をして「いよっ、ナイススイング!」とか太鼓持ちをすればいいんでしょうか。

そんなこんなで当日。
実際に僕がやってた仕事は



講演者への英語の通訳。



要するに、大学の事務方のみなさんは英語が話せないので、書類手続きや必要な手配等に関して、講演者のみなさんにお願いをする仕事でした。

講演者への謝礼は、当日に現金で渡します。しかし、国によっては学術研究にかかる謝礼に関しては税金を免除できる条約を結んでいる国があります。そういう国からの招待講演者の方には、シンポジウムの朝のうちに租税免除の書類を書いてもらう必要があります。
そのあと、大学事務員さんがダッシュで税務署に走ります。そして税金免除の認可を取り付けたら、すぐに大学に引っ返し経理課に走って、謝礼分の現金を用意します。
これを、1日の間に、シンポジウムが終わるまでにぜんぶ行わなければいけないわけです。

まぁ確かに、英語に慣れてない人だったら「すみませんがコピーを取る必要があるのでパスポートを貸して頂けませんか」だってかなり言いにくいでしょう。ましてやシンポジウムで招待するような海外の研究者の方々に何かをお願いする際、失礼があってはいけません。
そうでなくても大学の事務の方々は、シンポジウム当日はかなりのプレッシャーのもとで仕事をしてますから、そういう、ことば関係のことで無用なストレスを増やしていられないのでしょう。

そういうわけで「接待」などという曖昧な役名で、僕に通訳の仕事が廻ってきたようなのです。
条件として

・英語ができる
・招待講演者の方々と一晩で仲良くなれる(=酒が飲める)
・フットワークが軽く、あちこちに簡単に動ける
・いざとなったら同時通訳なしで司会や質問などの仕切りができる



はい、やります。



もちろんやらせていただきますとも。



事務方さんの必死の努力と、運営チームの円滑な連携によって、シンポジウムは盛況のうちに無事終了しました。
公開シンポジウムですので、一般市民の方や高校生の観衆もいらっしゃいまして、立見が出るほどの盛況振りでした。同時通訳のレシーバーが足りなくなる有り様です。
僕もこういう仕事ひとつひとつを通して、ちょっとづつ経験値が上がっていく感じがします。



できることが増えていくっていうのはいいもんですね。