1 : 酪農研修生(大阪府) :2007/06/14(木) 21:30:10
風采の上がらない男が舞台に現れた。2000人を超す聴衆が彼を見守っている。
そして、舞台脇から3人の審査員たちが彼に冷たい視線を浴びせている。
ずんぐりした体つき、安物のスーツ、短すぎる髪型、
そしてシンガーとしては致命的にも見える歯並びの悪さ。
この男がまもなく会場に空前絶後の感動の渦を巻き起こすとは誰も予想していなかった。

ウェールズで携帯電話のセールスマンをしているポール・ポットさん(36歳)は、先日、
英国のタレント発掘ショー“Got Talent TV”にエントリした。
単に風采が上がらないだけではなく、
これまで度重なる不運に見舞われてきた。
虫垂破裂、副腎に出来た巨大な腫瘍、バイク事故による鎖骨粉砕骨折・・・。

3人の審査員の中には、レコード会社の役員と音楽プロデューサを兼ね、
毒舌のアメリカンアイドル審査員として有名なサイモン・コーウェル氏も含まれていた。
ポールさんにとっては、2000人を超える聴衆の前に立つことに加え、
サイモン・コーウェル氏の厳しい視線にも耐えなければならなかった。

女性審査員がいかにも期待ゼロという取り繕った表情で
「今日は何を演じるために来たの?」
と聞くと、ポールさんは「To sing an opera」と答えた。
そして、まず伴奏が始まる。
彼が選んだのは、オペラ「トゥーランドット」の歌曲の1つ
“Nessun Dorma”(邦題:「誰も寝てはならぬ」、プッチーニ作曲)だった。

最初、聴衆も審査員もなんだかしらけ気味の様子でポールさんのことを冷ややかに見ている。
だが、いったん彼のテノール・ボイスが鳴り響くと、すべてが一変する。

スタンディングオベーションに湧く会場。先入観を打ち砕かれた審査員たちの口から
は、賛美の言葉しか出てこない。満点合格である。ポールさんは近日中にプロ
歌手としてデビューを果たすはずである。

ポールさんは、“Wales on Sunday”紙の取材を受けて、こう話している。
「みんなに与えた第一印象が良くないことはわかっていました。 背も高くないし、太り気味だし、
古びた安物のスーツを着ているし、髪の毛も短くカットされすぎだし。
でも、歌っている間、審査員たちから目をそらさないようにしました。
サイモン・コーウェルさんがあっけに取られる様子を見て、確信しました。
きっと満点をもらえるに違いない、と」

ともあれ、ポールさんは、人は見かけによらないことを身をもって示してくれた。
そして、人生悪いことばかりではない、いつか輝ける時が訪れるかもしれない、ということをも。






客の反応が全てを物語ってる