コンピューターの画面に、記号○と×のいずれかを表示させる操作をくり返し行う。このとき、各操作で、直前の記号と同じ記号を続けて表示する確率は、それまでの経過に関係なく、pであるとする。
最初に、コンピューターの画面に記号×が表示された。操作を繰り返し行い、記号×が最初のものも含めて3個出るよりも前に、記号○がn個出る確率をPnとする。ただし、記号○がn個でた段階で操作は終了する。

(1) P2をpで表せ。
(2) P3をpで表せ。
(3) n≥4のとき、Pnをpとnで表せ。

(2006年 東京大学 数学(文系・理系)第2問)



時代は変わったんだなぁ。


東大の問題にしては親切だ。
(1)、(2)の誘導問題は東大くらいの大学では余計だったんじゃないか。


<こたえ>

(1) 題意を満たすのは、×が3個、○が2個でる場合で、
×○○、××○○、×○×○、 
の3通り。それぞれになる確率は
(1-p)p、p(1-p)p、(1-p)3
よって求める確率P2は、これら3つを足したもの。
P2=(1-p)p + p2(1-p) + (1-p)3
= (1-p)(1-p+2p2)  ・・・(答)


(2) 題意を満たすのは、×が3個、○が3個でる場合。
×○○○, ××○○○, ×○×○○, ×○○×○
の4通り。それぞれの確率は、
(1-p)p2, p(1-p)p2, (1-p)3p, (1-p)p(1-p)2
よって求める確率は、この4つの確率を足せばいい。
P3= (1-p)p2 + p(1-p)p2 + (1-p)3p + (1-p)p(1-p)
= p(1-p)(2-3p+3p2 )  ・・・(答)


(3) 最初に出たのが×なんだから、題意を満たす状態を考えるには、「×の個数」「2個めの×の位置」を軸に場合分けをすればいい。

(i)×が最初の1個しか出ない場合
記号列は、×○○○・・・○となり、○ばっかりn個並ぶ。
この確率は (1-p)pn-1

(ii)×が2個出て、最初にふたつ×が連続する場合
記号列は、××○○○・・・○となる。
このとき、「前と違う記号が出るパターン」は3回目のただ1つしかない。
よってこのときの確率は
(1-p)pn

(iii)×が2個でて、ふたつの×が離れている場合
このとき、記号列は×○○・・・○×○・・・○となる。
このとき、「前と違う記号が出るパターン」は、「2回目」「ふたつめの×」「ふたつめの×の直後」の3つある。
「ふたつめの×がどこに出るか」に関して(n-1)通りのパターンがあるから、このときの確率は
(n-1)(1-p)3pn-2

よって、求める総和の確率Pnは以下の通り。
Pn = (1-p)pn-1 + (1-p)pn + (n-1)(1-p)3pn-2
= pn-2(1-p){n-1-(2n-3)p+np2}  ・・・(答)




あんまり美しい答えじゃないな。


最後の因数分解がちょっとテクニカルなところを除けば、まぁ真っ当な問題。
「ちゃんと学校で勉強してましたか」という、フツーの数学能力を問う問題。
『ドラゴン桜』で気合を注入して猛勉してた手合にはサービス問題に近い。

東京大学くらいのレベルの大学は、定理や公式をやたらめったら暗記している秀才が裏技一発で解けるような陳腐な問題は出さない。「こつこつと実験をくり返し、法則性を見いだし、それを一般化して考える」という、数学が最も培うべき能力を正面から問うてくる。この問題も、「×の個数とその位置」による場合分けに気づくのは、「自分で実際にやってみる」という姿勢が定着していれば造作ない。それに気づけば、あとは一直線に近い。東大であれば(1), (2)の導入なしで、いきなり一般解を求める(3)を出してもいいと思うが、ま、そこは東大の情けだろう。



これからヒマつぶしには事欠かさない季節になりますよ