東横インの偽造工事が叩かれてます。


2006年01月31日 産経新聞『産経抄』

2006年01月31日 朝日新聞『天声人語』


東横インが、法律や条例で義務づけられた身障者設備を不正改造していた問題が波紋を広げている。社長は会見で、条例違反を認めながら、「身障者客室を造っても、年に一、二人しか来なくて、一般の人には使い勝手が悪い」といってのけた。
(『産経抄』)


西田憲正社長が記者会見で自らの違法性を評した言葉は、あまりにも軽かった。「時速60キロ制限の道を67?68キロで走ってもまあいいかと思っていた」。「バリアフリー」の流れに逆行する情けない言葉だ。
(『天声人語』)



ひどいですねぇ。


一連の建築強度偽造事件に引き続き明らかになった建築業界の不祥事であるわけだが、どうも法律を軽視し、ないがしろにする姿勢が横行しているようで気になる。ちょっと法律をなめすぎてはいないか。

言うまでもなく、法律は守らなければならない。特に建築基準法や道路交通法などの公共の安全に関わる法律は、軽視すると大惨事を招く。

「時速60キロ制限の道を67?68キロで走ってもまあいいかと思っていた」とは恐れ入る。こんなことを言う人が経営するホテルに泊まることを考ええるとぞっとする。普段、往来で時速60キロ制限の道を67?68キロで走っているクルマが多いからといって、その行為が容認されるわけではない。ましてや、そういう現状をもって道路交通法の意義を貶めるなどもっての他だ。

だが、世の中にはそう考えない人がいるようだ。
以前、僕の記事に対するコメントとして「違反者の多さはその法が社会の実状に適していない可能性を示す重要な指標です」と平然と言い放った人がいた。速度制限を守らないクルマが多いことや、年に身障者が1?2人しか利用しないことを以て、法律を「現状に適応してない」などと考え軽んじる人は、大きな勘違いをしていると思う。ところが、そう思う人は、僕が想像している以上に多いのかもしれない。法律に基づいて社会の在り方を決めようとするのではなく、自分の都合に合わせて勝手に法律を無視する人が多くなってはいないか。

ここ一年ほど頻発するようになった鉄道各社の事故や、建築基準違反などの事件は、共通した要因として「目先の利益に捉われて、法律と安全基準を無視したこと」がある。こうした、安易に法と安全に背く姿勢は、取り返しのつかない大惨事を招くばかりか、法治国家としての社会通念までをも崩壊させる恐れがあると思う。

「年に身障者が1?2人しか利用しない」「身障者用の施設が一般客の利用の妨げになる」という現状を以て、「ホテルに身障者用の設備をつけなくても構わない」という理屈が正当だと言えるだろうか。
「一般客の利用を不便にするような建築基準法の方が、社会の現状に対応していない」と言い張るつもりだろうか。



そういう人が社長になるとこういう企業になるんだろうな


2006年01月31日 産経新聞『産経抄』

 テレビ朝日系の『徹子の部屋』が、来月二日で三十周年を迎える。黒柳徹子さん(72)は、週五日、一回四十分のインタビュー番組を、一度も休むことなく八千回近くこなしたことになる。

 ▼もっと驚くべきは、ほかにもテレビのレギュラー番組をもち、舞台女優でもありながら、ユニセフ親善大使として、貧困や内戦で苦しむ国々の子供たちを励まし、ろうあ者の劇団を運営するなど、福祉活動にも熱心なことだ。

 ▼東京・乃木坂にある黒柳さん行きつけの喫茶店で、その理由を尋ねたことがある。黒柳さんは、五歳のころ、足の病気で入院生活を送った体験を話してくれた。両親は医師から、一生松葉づえが必要と宣告されていたという。

 ▼ところがリハビリの結果、奇跡的に歩けるようになった。退院後しばらくして、同じ病院にいた同い年くらいの女の子と道でバッタリ出会う。女の子は真っ赤な松葉づえをついていた。黒柳さんは、完治した自分の足を見せたくなくて、その子の姿を見つけると隠れるようになった。

 ▼今となっては、どうして言葉をかけてあげられなかったのか、悔やまれる。でもそのときは、治る子と治らない子がいるのはなぜだろう、と幼いなりに考えていた。そして、治らない子に悲しい思いをさせたくない、とも。世の中の不公平に対する義憤が、黒柳さんの生き方のベースになっていると感じた。

 ▼東横インが、法律や条例で義務づけられた身障者設備を不正改造していた問題が波紋を広げている。社長は会見で、条例違反を認めながら、「身障者客室を造っても、年に一、二人しか来なくて、一般の人には使い勝手が悪い」といってのけた。トットちゃんの心を失った経営がまかり通っていたことが何より恐ろしい。



2006年01月31日 朝日新聞『天声人語』

ライブドアのやり方が株による錬金術とすれば、こちらは、部屋をひねり出す「錬室術」と言えるだろうか。ビジネスホテルチェーン大手の「東横イン」が、悪質な偽装工事をしていた。

 横浜市内のホテルでは、法律や条例で義務づけられた身障者用の設備や駐車場を、完了検査後に通常の客室などに違法に変えていた。チェーンの他のホテルでも、駐車場から貸事務所への改造などがみつかった。

 「もし、社長が車いすの生活になって、自分のホテルに泊まれないとしたら、どれだけ悲しいか。そう考えてみるだけでいいのに」。交通事故で20年前から車いすの生活を送っている42歳の男性の言葉が重い。

 反対に、西田憲正社長が記者会見で自らの違法性を評した言葉は、あまりにも軽かった。「時速60キロ制限の道を67?68キロで走ってもまあいいかと思っていた」。「バリアフリー」の流れに逆行する情けない言葉だ。

 違法な改造は、かなり前からあったようだ。94年には、仙台市内のホテルについて、市側から指摘された。市の指導によって違法性のないように改造したのは7年後だった。この時の「速度超過」の重みを、どう受け止めたのだろうか。その後も違法な改造を繰り返したとは相当悪質だ。

 東京に1号店を開いて、今年で20年になるそうだ。今の約120店舗を、2022年までに国内外で1045(トーヨコ)店にするのが、社長の目標だという。増やしに増やし、いずれ世界のトップをめざす。ライブドアと同じようなかけ声が、ここでもうつろに聞こえてくる。