世の中には気が狂ったとしか思えない天才がいるらしい。


えーと、複素数について。

ガウス平面を使うと、実数の計算がビジュアルで理解できる。
そもそも複素数の和は実数部分、虚数部分をそれぞれ足せばよいし、積は変数をもつ多項式を展開する要領で、虚数単位i をひとまとめにすればいい。

これをガウス平面上で考える。
異なる位置を占めるふたつの点で表される複素数同士の積は、

長さは「かけた長さ」、角度は「合わせた角度」

の点として示される。
ここで「長さ」とは原点からの長さ、「角度」とは実数軸の正の部分から反時計回りに測った角度のことを言うことにする。

こう考えると、たとえば「マイナスとマイナスをかけると、なんでプラスなのか」という問題がビジュアル的に解ける。
ふつう中学校の導入では、この問題は分配法則を使って解く。ところがガウス平面で考えると、虚数部分をもたない実数のマイナスの数同士というのは、要するに

「実数軸の正の部分から反時計回りに測った角度が、それぞれ180度の二点」

ということになる。
積は「角度を足す」のだから、マイナスとマイナスをかけると、180度と180度を足すことになり、360度ぐるっと廻って実数軸の正の部分に戻ってくることになる。


複素数を未知数とする方程式で、xn =1 の形をしている方程式を円分方程式という。たとえば、x20=1 を解け、と言われたら、実数の範囲ではx=1, -1でおしまい。ところが複素数に拡張すると、解は20個ある。ガウス平面上の単位円(半径1の円)を20等分した点すべてがx20=1 の解となる。1と-1は、そのうち実数軸上にのっている特殊な例にすぎない。

では、x17=1 はどうだろう。

φ = 360/17とおき、
cosφ + cos4φ = a
cos2φ + cos8φ = b
cos3φ + cos5φ = c
cos6φ + cos7φ = d
a+b = e
c+d = f

この連立方程式を根性で解くと、cosφが求まる。

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要するにcosφが有限個の実数で表せるので、単位円との交点を作図で求めることができることになる。

このようにしてガウスはx17=1の解を平方根号だけで表せることを発見し、正17角形が作図可能であることを証明した。

ガウス、19歳の春のことだったそうだ。



不愉快な奴だ。