「鬼」事なかれ主義で減った
(asahi.com 2004.01.31)

人の上に立つ者は、どこかしら鬼でなければならない気がする。

一つの集団を統括し一つの事業を行うとき、上に立つ者に必要とされる能力は様々だろう。先の展開を見抜く能力、個々の能力を把握する能力、事務処理能力など、リーダーシップに必要な力はいろいろある。

中でも重要なのは、「気迫や緊張感をもたらす厳しさ」ではないかと思う。みんなが和気あいあい、仲良しこよしの和やか集団は、大きな仕事を成し遂げることができないと思う。厳しさは、別に大声を出し人を叱り飛ばす尊大な態度とは限らない。もの静かで口数も少ないが、その人のあり方を見ているだけで背筋が伸びてしまうような内に秘めた厳しさもまた、ひとつの厳しさだろう。いずれにせよ、「その人がいるだけで場の緊張が引き締まる」という要素こそ、リーダーシップの条件だ。

みんなに常に愛されるリーダーなど、たいしたリーダーではないと思う。人の上に立つものは、何かしら小さいことでメンバーの反感を買うような「個」を確立してるのではなかろうか。妥協は許さず、緊張感をもたらすためなら意見や注意の口数を惜しまない。しかし同時に、落胆し意気喪失させないように後のフォローに気を配る。こういう厳しさと気遣いの同居が、魅力のあるリーダーの要素であるような気がする。

阪神の星野前監督がピッチャーが投球練習をしているブルペンに姿を現すと、場の空気が一瞬に張りつめたという。怒鳴り散らすでもなく、大声を出すでもなく、黙って投球を見ているだけでピッチャーは「まるで試合本番で投げているような」緊張感に襲われたそうだ。その「鬼」は、ただ厳しいだけでなく、褒めることのタイミングと重要性を心得ていた。星野監督に褒められた選手は、その達成感と充実感だけでシーズン中の気力が充実したらしい。日頃の厳しさが、褒めることの効果を相乗的に高めていたのだろう。

そういえば、ここんところ生活に緊張感がないなぁ。