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カンディンスキー、「コンポジションVIII」です。

超ヘンな奴です。なんでしょうこれ。最初は「へんな模様だなぁ」と思うだけでした。
でも、なんとなく好きなんです、この絵。
もともと絵の好みとしては、何が描いてあるのかがはっきりした、写実的なものが好みでした。抽象画はその存在意義がまったく分かりませんでした。
その好みが変わったきっかけは、この絵だったような気がします。

この絵を知ったきっかけは、NHKの「ドイツ語講座」でした。ストーリーに登場する女の子がこの絵を見て、首をひねってるシーンがありました。自分の好みのものから脱却して新しいものを知るには、歩き回って棒に当たるのが一番だと思います。あてのない逍遥は芸術に有用なんですね。

芸術とは何か。人にとっていろいろな定義があると思いますが、僕は「言葉にしにくい概念を表現する手段」と定義しています。音楽は音を、絵画は色彩を、彫刻は形状を媒体とする表現手段です。絵画において、「何を表すか」以前に、「何で表すか」という、もともと手段であるはずの色彩が、目的化した絵画も当然あるでしょう。色の鮮やかさだけを読み取る絵画。何を描いているのかは不問。そういう絵だと思います。この絵の色彩は僕の好みです。何を書いているのかさっぱり分かりませんが、使っている色が僕の好みです。今までにはできなかった絵の見方でした。

後から知ったことですが、カンディンスキーは「音楽を絵画化する」という変なことを試みていた画家でした。音楽は聴覚、絵画は視覚に基づき、それぞれの認知のしくみはまったく異なるため、科学的にはまったく無意味なことをしていることになります。でも僕個人としては、こういう無意味なことをする面白い奴が、もっともっといていいんじゃないかなと思います。

行為に目的なし、存在に定義なし。本質よりも実存が先立つ人間だからこそ、破れた殻なんでしょうね。