高校サッカー選手権準決勝、鹿児島実業(鹿児島)vs筑陽学園(福岡)の試合結果を見た。
筑陽高校の監督のコメントとは裏腹に、完全に鹿児島実業を手玉にとった試合だったと見える。初出場で決勝進出はフロックではないだろう。

セットプレーで点をもぎとり、守備を固めるというスタイルは、相手にとっては戦いようがない。焦りがスキを生み、裏を取られて自滅する。トーナメント式の短期決戦では、最も戦力の消耗が少なく、確実な戦い方だ。

思うに、90分に及ぶ戦いで、すべての時間が同じ密度をもつわけではないのではないか。
勝負には、まさしく「ここが勝負どころ」というポイントの一瞬がある。実力が伯仲していながら、その一瞬のポイントを読めないばかりに勝負の天秤が傾く場合がある。そのポイントの一瞬をそれとわかるには、相当の経験値が必要だ。

私はナショナルチームではドイツ代表がひいきだが、ドイツはまさしくそういうチームだ。勝ち方を知っている。勝負をかける時間帯を11人全員が共通して理解して総攻撃をかけ、ワンチャンスをものにする。華麗なテクニックを操るファンタジスタは存在しないが、各々の役割分担がはっきり決められており、負傷やサスペンションにより選手を欠いても戦力が落ちない。190センチを上回る選手を揃え、セットプレーの重要性を知っている。ディフェンスが堅く、本気で守られると得点が非常に困難だ。
ドイツ代表歴代得点3位のクリンスマンは、競技場で実際に見ると非常に運動量が少なく、やる気がなく見えたそうだ。しかし、勝負どころを熟知しており、勝負の時間帯になるといきなり運動量が増え、気づくと得点をあげている。通はクリンスマンの運動量を観察し、彼が動き始めると得点を予感できたらしい。

筑陽学園の監督は、勝負どころを熟知し、状況に応じた戦い方を柔軟に変えられるようだ。トーナメントの戦い方の常套手段の正道を踏んでいると見る。なかなか面白いチームが勝ちあがったもんだ。