モーニング娘。「Memory―青春の光―」考高校物理教諭が定理覆す発見

2003年12月25日

色々、色について

科学の授業で、「空はなぜ青いか」という問題を出した。
一番多かった答えは、「海の色を写しているから」。なかなかロマンがあってよい。女の子がこう答えた場合は特に好ましい。ぜひとも実地研修のために海に連れて行ってやりたい。
「宇宙が透けて見えるから」というのもあった。宇宙が透けるとなぜ青くなるのかわからないが、ちょうどこの問いを出したのが夏だったので、女の子の服でも眺めてたのではないかと思われる。
ひとつ秀逸だったのは、「俺が青く塗ったから」。迷うことなくこれを最優秀答案としたのは言うまでもない。

ただ、残念ながら科学の授業では、上の答案はすべてマルというわけにはいかない。
正解は、「青以外の波長はすべて大気に吸収されてしまうから」。
この問いと正解を正しく理解するためには、実は「色とは何か」という、より根源的な知識を必要とする。

赤いバラがあるとする。なぜそのバラは赤く見えるか。
「肥料をよくやって育てているから」という答えではなく、赤が赤と見える理由を問う。
赤いバラは、正確に言うとバラそのものが赤いのではなく、光を受けると赤以外のすべての波長をすべて吸収し、赤い波長だけを跳ね返している。光は、昔から単一で純粋なものと考えられていた。しかしニュートンはプリズムを使って白色光を七色に分散してみせ、スペクトル解析の端緒を開き、光に関する物理的考察を飛躍的に進歩させた。ちなみにこの発見はニュートンの「奇跡の23歳」の年に行わている。この年、ペストの流行のためケンブリッジを離れ実家でのんびり研究をしていたニュートンは、スペクトル解析、微分積分法、万有引力という3大発見を成し遂げる。すべて、従来の科学を飛躍的に進展させる契機となる画期的発見であった。不愉快な奴だ。

ニュートンが示したとおり、光の波長は雑多な色彩の束なので、そのいくつかが吸収されると残った波長が我々の眼に届く。空が青く見えるのは、青以外の波長は大気中で乱反射し、拡散してしまので、青い波長だけが我々の眼に届くからだ。

「赤いセロファンは何色か」という問いもある。大多数の生徒は問いの意味すら分からない。
赤いセロファンは、セロファン自身が赤いのではない。「赤以外の波長をすべて吸収し、赤い波長だけを通過させるセロファン」である。よって赤いセロファンを通してみると、すべてが赤く見える。この問いも、「色とは何か」という根源的な問いに答えて初めて回答可能な問いである。

素朴な疑問は、疑問が素朴であればあるほど、その前提条件を構成する問いにすべて答えて初めて回答可能となる。
子供はそういったステップを行儀よく踏まえて論理を構築するのが苦手なので、「ぶっちゃけた単純回答」を欲しがる傾向にある。科学の授業とは、単純な問いの裏に隠されている、必要な論理的考察のステップを自ら構築し、それを正しく踏む重要性を認識させることが最重要であろう。釘も打てない、材木も切れない者は、犬小屋ひとつ作れないのと同じことだ。答えだけを性急に欲しがる者は、考察の各ステップを軽視するため自分で思考を再構築できず、知識が定着しない。

現在の初等教育では、科学的思考法をどのように教えているのか興味深い。私は高校時代に、数学の行列の問題で、答案に「ケーリー・ハミルトンの定理により」という言葉を絶対に書くな、と教わった。定理というのは証明可能な言明なので、証明なしに使うことは許されない。答案に書く際には、そのステップを飛ばすことなくきっちり言及することが求められる。

「空はなぜ青いか」という問題は、こういった「問いに答えるために必要なことを自分で見抜く必要性」の具体例として出題した。
なぜかその日は曇りだった雲

このエントリーをはてなブックマークに追加
at 11:10│Comments(4)Philosophy 

この記事へのコメント

4. Posted by たくろふ   2004年10月09日 14:47
しーぽんさまこんにちは。
ずいぶん前の記事ですね。
最近は、問いの立て方を説明するときには人間の認識に関わる事例を使わないほうがいいと思うようになりました。客観的な現象と主観的な認識との一線を区切ることが難しいんですね。
今現在、常識として流布している知見は、大学で学ぶレベルのものも含め、大多数は間違っていると思います。僕の分野でも学部生のときに習った事はほとんど「入門のためにわかりやすく砕いた知見」であって、正確には間違いだらけでした。知識っていうのは怖いですね。
ちなみに私が教えてたのは子供ではありませんし、そうも書いていません。いい歳をした大人です。僕よりもかなり年配の方もいらっしゃいました。
3. Posted by しーぽん   2004年10月05日 14:45
微妙に間違えてますよ。いくつか合ってていくつか間違えてます。
人間の(非哲学的)色認識は基本的に相対的なものだから、例えばあるものを「赤」と認識するには二つの方法があって、眼で
1)本当に「赤」だけ観測する。
2)補色である「緑」が減っている状態を観測する。
(但し、これらの観測が直接光であるか反射・散乱光であるかは問わない。)
で、バラなどの普通のものは2の「補色を吸収すること」で「赤」を見せてる筈です。(物ごとに要チェック。中には干渉を使うものもある。コガネムシの背中とか)「赤以外全部」じゃなくて補色だけで十分です。
空の色は1です。正確にいうと、レイリー散乱と呼ばれてるもので、波長の短いものを撒き散らす散乱です。宇宙の色はもちろん暗黒の3K輻射なので、その上に青色が散らされている感じ。赤が吸収されるというのは妥当な表現ではない。
子供に教えてるとか書いてあったので気になってコメントしてみました。
もちろん認識論で「俺が青く塗った」もありだし、ラベリングを使って「青という名を付けたから」もありですし、逆手にとって「俺は赤と呼んでいる」とか「俺は俺色と呼んでいる」もありです。
失礼しました。
ではでは。
2. Posted by たくろふ   2003年12月26日 09:07
「なーに」ヒマなだけさ。ホントは更新なんてしてる場合じゃないんだけどね。読まなきゃならん論文がどこかいっちゃったのをいいことに探してない。ずっと見つかんなきゃいいなと思ってる。
1. Posted by その後輩   2003年12月25日 11:42
「いっぱい書いてますねー」わずかの間にずいぶんアウトプットしましたねー!米国では、それくらい一気にアウトプットできる馬力がないとやって行けないのでしょうか。ちょっとめげそう。。。blogは専門学校の授業でやったのですが、htmlの書けない子も、website作りの楽しさは味わえたようですよ。その「空が青い理由」の思考法を教えた後に「日によって同じ青でも青さに違いがある理由」をたずねてみると、学生の理解力が試せそうですね。

コメントする

名前
URL
 
  絵文字
 
 
モーニング娘。「Memory―青春の光―」考高校物理教諭が定理覆す発見