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大好きな女優というのはいませんが、気になる女優ならいます。
Romane Bohringer (ロマーヌ・ボーランジェ)。
まぁ、皆さん知らないでしょう。

Mina Tannenbaum (「ミナ」1994)
Total eclipse (「太陽と月に背いて」1995)
などが代表作とされています。
特に後者ではLeonardo DiCaprioと共演しているので有名になりました。

ところが,僕が気になる作品はこういう代表的な作品ではないんです。

L'accompagnatrice (「伴奏者」1992)

という作品。
第二次世界大戦のパリを舞台に,ある声楽家の伴奏者として雇われた少女が,人生のさまざまな陰影を知り成長していく,という内容です.伴奏者という決して表舞台に立つことのない立場から、登場人物の人間模様をみつめる視線が基本的なスタンスになっています。

はっきりいってB級映画です.興行収入を上げられる作品でも,後世に残る作品でも,賞を受賞する作品でもありません.ストーリーは平凡で,あっと驚く展開も,手に汗握る展開もありません.

僕がこの映画が気になる理由はただひとつ,「作品の持つ雰囲気」です.作品を通して,常に闇の中の仄かな灯を頼りにストーリーが進みます.霧に包まれたパリの街を舞台に,ナチスがパリに落とした暗い影が作品全体を覆っています.

ふつう,「好きな映画」というのは,度肝を抜くアクションや込み入ったストーリーにその魅力があると思います.僕も今までそうでした.
僕の好きな映画の要素は,「撃ち合い,殴り合い,爆発」です.しかし,この映画ははじめてアクションでもストーリーでもない,雰囲気にのまれた映画でした.この映画の主人公のRomaneも,決して華のある女優ではありませんが,彼女以外にこの役をやれる女優がそう何人もいるとは考えられません.
ハリウッドでは,どうがんばってもこの手の作品は作れないでしょう.わかりやすいアクションやストーリーを売り物にし,興奮系か感動系のどちらかに分類できるハリウッドとは,あまりに作風が違いすぎます.フランス映画はたまにこういう作品を作るから無視できないんですね.

この映画は街のレンタルビデオ屋さんに行っても貸し出してません.日本では発売すらされてません.僕はテレビの深夜映画で見ました.なんとなく見てたんですが,引き込まれて,最後まで見てしまいました.ゴールデンアワーに流す映画ではないと思います.深夜枠に,人知れずひっそりと流れるにふさわしい映画だと思います.

この作品を彩る印象の原因をもうひとつ。Romaneの陰のあるフランス語ですね.英語は張り上げる言葉で,フランス語はささやく言葉と聞いたことがありますが,この作品に関する限り言いえて妙です.Romaneのしっとりとしたフランス語を聞くだけでもいい作品です.

この作品のビデオは,アメリカに来てから通販で買いました.
もう品切れだそうです.